命の現場を守る「働き方改革」の真実。晃友会が示す持続可能な地域医療の道筋とは。
2026-08-06 12:00:18

少子高齢化に伴う医療需要の増加と生産年齢人口の減少は、日本の医療機関に深刻な人材不足をもたらしている。さらに2024年から始まった「医師の働き方改革」は、現場に大きな意識変革を迫ることとなった。急性期医療から介護まで切れ目のないサービスを展開する医療法人社団晃友会では、この転換期を医療の質を高める好機と捉えている。同法人の山瀬理事長に、地域医療の持続可能性にかけるその熱き想いを伺った。
使命感だけに頼らない組織へ。過酷な急性期医療が直面する持続可能性への課題。
日本の医療は、長らく医療従事者の献身的な努力と使命感によって支えられてきた。しかし、少子高齢化の加速による医療需要の増大と働く世代の減少が重なる現在、その構造は限界を迎えつつある。特に脳神経外科や循環器内科といった高度急性期医療の現場では、一刻を争う疾患に24時間365日体制で対応しなければならない。心筋梗塞や脳卒中といった命に直結する局面において、医師は昼夜を問わず重い責任を背負い続けている。
山瀬理事長は、こうした過酷な環境における負担や責任に対して、社会的・制度的な評価が十分に追いついていない現状に強い危機感を抱いている。勤務医の負担が適正に評価されなければ、過酷な領域を志す若い医師が減少し、結果として地域の救急医療体制そのものが崩壊しかねないからだ。医療従事者が心身ともに健康で、誇りを持って働き続けられる環境を構築することは、もはや一法人の問題ではなく、社会全体で解決すべき喫緊の課題である。
「急性期医療を担う勤務医に魅力や将来展望が示されなければ、若い医師が負担の大きい領域を志さず、開業へ進むのは自然な流れです。これは個人の選択ではなく、日本の救急・急性期医療を将来にわたり維持できるかという社会全体の課題です。使命感だけに頼らず、安心して働ける環境を整えることが質の高い医療の提供に繋がります。今は『人を増やす』だけでなく、『高度な医療を担う人材をどう育て、どう支えるか』を真剣に考える時代に入っています」と提言する。
効率化が生み出す、患者さんと向き合う時間

「医師の働き方改革」と聞くと、「医師の労働時間を短縮すれば、患者さんへの診療やケアが手薄になるのではないか」という懸念の声は少なくない。しかし、働き方改革の目的はむしろその逆であり、医療の質と安全性を長期的に担保することにある。
長時間手術や、迅速な救急対応など、集中力の維持が命を左右する現場において、医療従事者の過度な疲労は判断力の低下やパフォーマンスの低下を招くリスクとなる。だからこそ医療者が健全な状態で診療に臨む環境を整えることは、決して医療の質を下げるのではなく医療安全の基盤なのである。
そのために同法人が目指すのは、AIやデジタルツールを積極的に活用し、事務作業や情報共有を効率化することである。限られた医療資源の中で地域医療を持続的に支えていくためには、従来の業務のあり方を見直し、医療従事者が本来注力すべき患者さんと向き合う時間を最大限に創出することが欠かせない。一方で、山瀬理事長は、デジタル化が進むほど人と人とのコミュニケーションの重要性はむしろ高まると考えている。
そのため同法人では、医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーなど、多職種がそれぞれの専門性を発揮しながら密に連携できる体制づくりを進めている。デジタルツールを活用した迅速かつ正確な情報共有により、限られた勤務時間の中でも効率的な意思決定を実現し、患者さんへの丁寧な説明や対話、多職種による質の高いチーム医療につなげていく考えだ。
変化を力に、地域医療の未来を創る

これからの地域医療や介護の現場は、さらに激しい変化の波に洗われることになる。晃友会は、この人手不足が進む未来を危機として恐れるのではなく、構造変革のための絶好のチャンスと捉えている。今後は単一の病院だけで全ての機能を完結させるのではなく、急性期から回復期、在宅医療、それから介護にいたるまで、地域全体が有機的に連携して地域住民を支える仕組みづくりが必要不可欠となる。
その未来像において、介護分野を中心としたAIやロボティクスの導入、さらには国籍・文化を問わない多様な人材の活躍推進は避けて通れない。同法人が見据えるのは、テクノロジーを駆使して業務を効率化しつつ、同時に人間にしかできない専門的判断や倫理的支援の質を高める先進的な組織の姿である。
変化を恐れずに新しい技術を学び続け、多様な人材がそれぞれの専門性を最大限に発揮できる環境を整える。それにより、地域住民から深く信頼され、次世代の医療従事者からも選ばれる持続可能な医療インフラを構築することが、晃友会の描く壮大なビジョンである。
医療従事者の働き方改革は、単なる労働環境の大がかりな是正にとどまらず、地域医療の未来を守るための挑戦である。「この地域に晃友会があってよかった」と患者さんに感じてもらえる安心感を提供し続けるために。そして、未来を担う医療人材が「ここで成長したい」と誇りを持てる理想の職場であり続けるために。同法人は、効率化と専門性の融合という新たな医療のあり方を追求し、これからも地域社会と共に歩みを進めていく。

■取材協力:
医療法人社団 晃友会
理事長 山瀬 美紀
https://koyu.or.jp/
情報提供元: マガジンサミット