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5回交渉も「一致点」まだ…“トランプ関税”何%なら日本の輸出企業は乗り切れる?【Bizスクエア】

経済
2025-06-11 06:00

交渉が難航するトランプ関税。相互関税10%に…という相場観も出ているが、果たして何%なら日本の企業は持ちこたえられるのか?


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「さらに進展」も一致点はまだ

日本時間の7日朝、5回目の日米関税交渉に臨んだ赤沢亮正経済再生担当大臣。
ベッセント財務長官とは45分、ラトニック商務長官とは110分の協議を行った。


「5回の訪米を通じて信頼関係もできていると思う」と話した赤沢大臣だが、協議の進展について聞かれると…


赤沢大臣(協議後、日本時間7日朝):
「合意の実現に向けた議論がさらに進展したといえると考えているが、“一致点を見出せたかと言えば見出せていない”


自動車関税の主たる所管であるラトニック商務長官とは、2日連続で110分という長い協議となったが、ワシントン支局の守川雄一郎記者は「依然として両国の隔たりは大きい」と話す。


守川記者:
「日米両国とも自動車が最重要の課題の一つだと認めている。アメリカにとっては最も問題視している貿易赤字の象徴的なものでもあり、日本にとっては基幹産業である自動車産業は最も守らなければいけないもの。それだけに両国の隔たりは簡単に超えられるものではなく、協議がなかなか進んでいない」


日本としては、輸出だけでなくアメリカ現地でも多くの自動車を作り貢献している。それなのに関税をかけるのはおかしい、という論理だが調整は難航しているようだ。


【米国での日本車の新車販売台数】
2024年:588万2438台(自動車メーカー6社の販売実績より)
▼アメリカでの現地生産⇒328万356台(日本自動車工業会より)
▼日本からの輸出⇒136万9063台(〃)


「米中協議」始まる一方で日本は?

また、今後の交渉スケジュールについて赤沢大臣は「国益を守りながら“ゆっくり急ぐ”」とし、G7サミット(15日~)まで協議が続くこともありえると話している。


ワシントン支局・守川記者:
「前回の4回目の協議後にはサミット前にもう一度閣僚協議を開くことで一致していた。ただ今回は次回の協議をサミット前に開くところまで一致できていない。その背景にあるのがアメリカ側の中国との関税協議」


5日、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席が電話で会談した。


トランプ大統領(5日):
「良い対話ができた。とても複雑な問題について整理することができた」


米中関係をめぐっては、アメリカの高関税政策への対抗措置として中国がレアアースの輸出を規制。世界で影響が出始めている。


▼米『フォード・モーター』⇒中国のレアアースの輸出承認手続きの遅れにより「部品の輸送が滞る」ケースが発生
▼独『BMW』⇒供給網の一部で輸出規制の影響が出ている
(ブルームバーグ通信より)


これまでアメリカ側は、中国がレアアースの輸出規制を続けていることを批判していたが、トランプ氏はSNSで<レアアースに関する疑問はもうないはずだ>と発信。何らかの進展があったことを示唆した。


さらに、トランプ氏は6日、SNSで貿易問題をめぐる【中国との閣僚級の協議を9日に英・ロンドンで開く】と発表。
アメリカ側からはベッセント財務長官・ラトニック商務長官・グリア通商代表が出席するとしている。


ワシントン支局・守川記者:
「日本が次回の協議について一致できない背景として、アメリカが9日に中国と関税協議を行うなど日程的にかなりタイトということがある。日本の優先順位が下がっているとも言えるので、<サミットまでのタイムスケジュール><大きな壁がある自動車>、その二つの面でも難しい状況が続いている」


相互関税10%なら「ギリギリ乗り切れる」

果たして日本への“トランプ関税”は何%で決着するのか。
4日には、鉄鋼・アルミニウムに課されていた25%の追加関税が2倍の50%に引き上げられている。


<品目別>
▼自動車・自動車部品⇒25%
▼鉄鋼・アルミニウム⇒50%
<相互関税>
▼一律⇒10%
▼上乗せ分⇒14%(7月9日まで猶予)


『第一生命経済研究所』首席エコノミスト・熊野英生さん:
「関税交渉で日本経済が腰折れするのか、それとも成長がギリギリ持つのかは<相互関税が10%>でいけるかどうか」


熊野さんが注目するのは、内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」だ。
輸出企業への<どのくらいの為替レートなら採算が得られるか>という調査では、2025年1月時点で【1ドル=130.1円】までなら円高になっても大丈夫という結果が出ている。


熊野さん:
「輸出企業の採算レートの130.1円に相互関税10%を加えると、143円(=130.1円×1.10)になりちょうど今ぐらいの為替レート。なので143円以上の円安水準なら10%でもギリギリ採算が取れるのではと見ている」


ーー10%程度の関税であれば、若干値上げも吸収もできて、日本経済が大きく減速するような事態にはならずに済むかもしれない


熊野さん:
「アメリカの言う通りの関税になると企業の収益は“5兆円分”も飛ぶ。しかし<相互関税が10%>なら、5兆円が2兆円になる。これは日本企業がギリギリ持ちこたえられるぐらいなので何としても日本は10%にしなければいけない。そこを交渉しているのだと思う」


関税交渉の先にある「2つの問題」

ただ、熊野さんは「相互関税10%」となったとしても、リスクは残るという。


【関税交渉の先にある問題】
▼中小企業の賃上げ
▼アメリカのインフレリスク


ーー先ほどの話だと、ギリギリ景気は持ちこたえても各企業の収益は悪化するわけだから【賃上げ】はなかなか難しい。どんな政策支援が必要か


熊野さん:
「大企業は海外などで価格転嫁できるが、国内では大企業が値上げを許さないので中小企業は価格転嫁ができない。実はスカートの裾を踏んでいるのは大企業ではないかという見方もあり、公正取引委員会や中小企業庁はコストアップ、価格転嫁を阻止するような行為があったら言ってくださいと監視の目を光らせている。ただ、これだけではなかなか難しいかもしれない」


ーー下請けいじめのようなものを監視する、あるいは最低賃金を引き上げる、大企業は率先して賃上げをする。これまでもやっているが、今後もやっていかないといけないということか


熊野さん:
「あとは生産性の改善。色んなソフトウェアやAIを導入しながら中小企業の稼ぐ力を改善する。すぐにはできないと思うが、そういう取り組みをすることで中小企業経営者が自信をつけるということかもしれない」


「賃金と物価の好循環」は幻に?

ーー<賃金と物価の好循環>というが、現に今実現できていない。さらにトランプ関税の影響が出てくるとなれば、賃金と物価の好循環は幻想に終わってしまうのでは


【4月】※速報値
▼名目賃金:前年同月比「2.3%」
▼実質賃金:同「-1.8%」⇒【4か月連続でマイナス】
(厚生労働省「毎月勤労統計調査」より)


『第一生命経済研究所』首席エコノミスト・熊野さん:
「賃金は上がっているが物価が上がりすぎている。日銀は2%と言っているが、実質賃金を計算する前提となる物価は4%。これはちょっとあり得ない。日銀が物価を安定させるという使命を果たし<利上げで円高>にすればいいのだが、トランプ関税がある今、利上げをすると企業収益自体がポキッと腰折れしてしまう。企業収益を重視するのか、利上げして物価安定に舵を切るのか。日銀はジレンマに苦しんでいると思う」


アメリカが「利下げ」できるかどうか

もう1つの問題は【アメリカのインフレリスク】だ。


ーーアメリカがインフレになると利下げできなくなり景気が悪くなると


熊野さん:
「アメリカ経済が良くなるためにFRBが利下げできるかどうか。トランプ関税で物価が上がると、FRBは動けなくなる。そこが懸念材料。
アメリカ経済が成長すれば、日本の企業は輸出拡大によりトランプ関税の負担は和らぐと考えている」


(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年6月7日放送より)


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