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赤沢大臣「今まで感じたことのない圧」トランプ大統領「大きな進展」日米関税交渉、専門家の評価と今後のポイント【Bizスクエア】

経済
2025-04-23 06:30

日本とアメリカの関税交渉が他の国に先駆けて行われたが、そもそも交渉を担当する大臣が抱える問題とは…?さらに今後は何が交渉のポイントとなるのか?


【写真で見る】日本にかけられているトランプ関税一覧


トランプ氏“サプライズ出席”の先に「中国」

日本時間17日に行われた関税を巡る1回目の日米交渉は、トランプ大統領との会談という形で始まった。


ホワイトハウスが公開した写真には、トランプ氏が度々口にする「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」(アメリカを再び偉大に)と書かれた帽子を被り、両手の親指を立ててポーズを取る赤沢亮正経済再生担当大臣の姿が…。


赤沢大臣(18日・自⺠党YouTubeチャンネルにて):
「今まで感じたことがないような圧を感じる状態ではあった。本人の言葉であれだけ熱を持って話していたから、ここは絶対譲れないところに近いなと」


複数の政府関係者によるとトランプ氏は
▼約9兆7000億円(約685億ドル)の日本への貿易赤字
▼在日アメリカ軍の駐留経費などの改善を要求したとのことだが、
【トランプ氏自らが出てきた狙い】は何なのか。日米の通商交渉に詳しい細川さんに聞いた。


『明星大学』教授 細川昌彦さん:
「自らこの交渉を“早くまとめたい”という意気込みを示したのでは。日本や韓国を優先しているのは、問題点がはっきりしていてまとめやすいから。同盟国が終われば次は本丸の中国。彼の頭は中国と交渉することを描いている。そのために急いでいる」


問題は「赤沢氏が喋れないこと」

およそ50分のトランプ氏との会談の後には、ベッセント財務長官らとの閣僚級会談が行われた。帰国した赤沢大臣は…


「お互いにここについて相手が受け入れられるようなものを作らないといけないというおおよそのテーマというものは、かなり掴めたような感じはする」(18日)


報告を受けた石破首相も「次につながる成果となったということを感じた」(18日)と話すが、細川さんは【今回の交渉における問題点】を指摘する。


細川さん:
「表向きは無難に済んだねということで評価している人がいると思うが、私はなかなかこれは厳しいと思う。赤沢さんにマンデート(委任された権限)がないから、喋れないんですあの人は。そこが問題」


▼【農産物】⇒党から「一切譲歩するな差し出すな」と言われている
▼【為替】⇒「20日の週に来る加藤財務大臣にお任せだからあなたではない」と言われている
▼【安全保障】⇒切り離してやるから今回は防衛省も随行せず


細川さん:
【農産物】・【為替】・【安全保障】、この三つの大事なカードを赤沢大臣は放棄して交渉に臨む。果たしてこれから先、重要な交渉に臨めるのか。政府一体なのかと」


今後の交渉「自動車とコメが先決」

4月中にも次回の閣僚級協議が予定されるが、今後の交渉については「アメリカが繰り返し口にする【自動車】と【コメ】で答えを出すことが先決」だと言う。


細川さん:
「今コメの値段が高騰して消費者が困っている。ならば備蓄米を放出した分の補充はカリフォルニア米を30万トン緊急輸入して無税でやりますと。それだけでトランプ氏は喜ぶ。6月中旬のG7サミットでは必ず日米首脳会談がある。その際には、【自動車】【コメ】の問題も大筋の目処がついていることが必要なのでそれまでにもう1回ぐらい、例えば5月の連休に石破総理が訪米して会うことが望ましい。それぐらいの首脳同士の会話が今回は特に必要」


米国に生産拠点「現実的ではない」

一方で、すでに発動されている関税も一刻も早い解消が求められている。


【鉄鋼・アルミニウム】(3月12日発動)⇒25%
【自動車】(4月3日)⇒25%(これまでの2.5%とあわせて27.5%)
【相互関税】(4月5日)⇒全ての国・地域が対象の一律10%(上乗せ分は90日間の猶予)

▼自動車部品⇒5月3日までに25%の追加関税を発動予定
▼医薬品・半導体・銅・木材⇒時期未定


特に自動車への追加関税は日本にとって深刻な問題だ。


日本の自動車メーカーの対応について、国際経営論と経営戦略論が専門の入山章栄さんに聞いた。


――これまで日米貿易摩擦の時は「アメリカに現地工場を出す」「投資を拡大する」と乗り切ってきた。

『早稲田大学ビジネススクール』教授 入山さん:
「一部報道で、ホンダがカナダとメキシコの生産拠点をアメリカに移すとあるが、そう簡単ではない。工場を移すというのは、とてつもないプロジェクトでお金もかかる。時間的にも3~4年は必要だがその頃にはトランプ政権は終わっている。なのでどの程度真剣にやるか、しかもすでにかなり移し切っている部分もある。さらに言うと、移したところで作れるのかと。特に最近の自動車は非常にレベルが高い。そう考えるとあまり現実的ではない」


国内回帰も「製造業の雇用にインパクトない」

米国企業もトランプ氏の求めに応じて国内回帰の動きがある。


▼GM(ゼネラル・モーターズ)⇒カナダ・メキシコから米国内での生産増を検討(3日)
▼エヌビディア⇒最新の半導体を米国内で生産すると発表(14日)
▼アップル⇒米国で4年間に5000億ドル(約72兆円)を投資(2月)


――これも眉唾もので、大体アメリカ企業は「何年間で最大何億ドル」とか言っても初年度は20分の1ぐらいしか出ない。エヌビディアも最新の「2ナノ半導体」をTSMC、台湾で作っている。本当にアメリカで作れるのか。

入山さん:
「無理、作れない。技術的にも、それと綺麗な水も必要だし優秀な人材も必要なので。そもそも今やアメリカの民間産業における製造業の比率は、雇用の比率で10%くらい。どんなに国内回帰をしても13~14%に増えれば御の字という程度なので実はそれほどのインパクトはない」


それなのに、トランプ氏がこだわる理由は…。


入山さん:
「トランプ支持層は『中国や日本から輸入品が沢山入ってくることで我々の雇用が奪われた』と思っているので、トランプ氏としては『製造業で雇用を増やす』というポーズを取りたい」


米国の格差対策を「海外に責任転嫁」

さらに、米国内への生産拠点の移管や投資を求める“最大の背景”と入山さんが言うのは、製造業が空洞化した事で中間層が分解し拡大した【格差の問題】だ。


しかし、「問題の解消は極めて難しい」と指摘する。


入山さん:
「アメリカの場合は、西海岸・東海岸ニューヨークと中西部の間で格差が大きい。しかし共和党支持者が観るようなメディアではトランプ万歳。むしろトランプは雇用をどんどん生んでいるとアピールしていて、それを観ているので考え方が完全に分断してしまっている」


――今までは逆に製造業からITやサービス業に人がシフトしていくことが産業の高度化を招き豊かになると肯定的に捉えられたが、負の面が今注目されているということか。

入山さん:
「要するにアメリカは製造業の貿易が弱くなっているからこういう話が出てきているが、サービス業に関して言うと、実はアメリカはデジタル輸出がものすごくて日本なんかは完全に輸入超過。本来はそういうところの資金を中西部のような人々に還流する仕組みを国内でやるべきなのに、それをやらずに海外に責任転嫁しているという状態」


今のアメリカは「明日の日本」?

製造業の空洞化は、他人事ではない。


日本でも自動車産業が基幹産業として残っているとは言えども、製造業の空洞化が進んでいる。やがてそれが海外に流れてしまうと、アメリカのような格差拡大・分断が進むこともありえるのだろうか。


入山さん:
「中長期的にはあり得るというか、気をつけなければいけないと思う。所得の格差は日本でも拡大していく可能性がある。そうなるとどうしても<不満を持つ層>と、<持たない層>で国が割れる。まさに今アメリカでそれが起きてしまっているので、日本も気をつけないといけない」


――学ぶべきものは「分厚い中間層が維持できるような」産業、とりわけ製造業をどう日本国内に残していくかということか。

入山さん:
「そういう意味ではもちろん自動車もあるが、日本には今後期待できる分野がある。いわゆるIoTといって“デジタルとモノ作りが組み合わさる時代”になると、改めてモノ作りの強さが重要になってくる。例えば、半導体や工作機械、ロボット。あと素材分野なども日本は非常に強いので、こういったところが更に力を持って雇用を生み出し中間層をさらに分厚くしていくことが大事」


――今ある優位な日本の産業をどうやって連関させて残していくかということが問われている。

入山さん:
「加えて言うと、新しい産業としてやはり観光業。今後もっとインバウンドを増やして、より高度な付加価値の高いサービスを提供していけば、それが我々の賃金に返ってくる。この辺を戦略的にやることが大事だと思う」


(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年4月19日放送より)


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