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「マインクラフトで未来を創る」教育者・タツナミシュウイチ氏が描く2030年【Style2030】

国内
2025-07-27 11:00

本日の賢者は、マインクラフト教育の第一人者、タツナミシュウイチ氏。マインクラフトは2009年にスウェーデンで開発されたブロックを使って自由に世界を構築するゲームで、全世界でユーザー数が3億人を超え、史上最も売れたゲームとしてギネス世界記録にも認定されており、現在もユーザー数は増え続けています。


【写真で見る】東京大学で研究している平和学習教育で作った長崎の浦上天主堂


ボックスを組み合わせることで自由に何かを作れる、まさに砂遊びのような「サンドボックスゲーム」と呼ばれるマインクラフト。タツナミさんは自治体と協力してマインクラフトを活用した新たな学びの形をデザインしたり、JAXA宇宙研究開発機構と連携して月や宇宙について遊びながら学べるゲームを開発したり、さらに、デジタルデザインや課題解決型学習のワークショップを全国で展開しています。


タツナミさんがSDGsの視点から2030年を見据えた新たな価値観と生き方のヒントを語ります。


ゲームの持つ力は娯楽にとどまらない

――この番組では、ゲストの方に「私のStyle2030」と題し、SDGs17の目標の中からテーマを選んでいただいております。タツナミさん、まずは何番でしょうか。


タツナミシュウイチ氏: 
4番の「質の高い教育をみんなに」です。


――大学でも教えてらっしゃいますね。では、タツナミさんが選んだSDGs4番「質の高い教育をみんなに」の実現に向けた提言をお願いします。


タツナミシュウイチ氏:
ゲームは、探究心を引き出す最高の道具です。 


――ゲームというと、「ゲームばかりやってないで勉強しなさい」と言われがちでしたが、ゲームが持つ力は変わってきたということですか。

タツナミシュウイチ氏: 
現在、さまざまな種類のゲームがありますが、娯楽にとどまらないものが確実に増えています。その一つがマインクラフトです。私自身、子どもの頃から物を作ることが好きだったので、大人になってからマインクラフトにはまりました。


マインクラフト×教育の可能性

――勉強とは対極だと思っていましたが、ゲームが教育に繋がるということですか。

タツナミシュウイチ氏: 
間違いなく繋がります。マインクラフトをツールとして使うことで、子どもたちの学びに繋がるツールとして活用できると確信しています。

私は15年間マインクラフトをプレイしています。2009年にストックホルムで生まれ、世界中に広がりました。ネットでマインクラフトを知り、面白そうだと感じ、家族と一緒に始めました。やっていくうちに、これは無限にできるブロック遊びだと気づきました。 私自身、レゴブロックが大好きでした。高くて買ってもらえなかったのですが、児童館で毎日組み立てていました。その中で物を作る楽しさや、建物がどうやってできているのかを子どもながらに学びました。大人になってマインクラフトに出会い、子どもの頃の思い出がフラッシュバックしました。ただブロックを積んで遊ぶだけでなく、教育とリンクする可能性を感じました。


――今、マインクラフトを知らない人は遅れていると言えますね。3億人ものユーザーがいますから。

タツナミシュウイチ氏:
子どもたちはよく知っています。動画サイトでゲームプレイ動画を見ているので、若い世代のほとんどがマインクラフトをプレイしています。プレイヤーの皆さんは見て知っている、あるいは自分でやって知っているという方たちが、この15年間で急速に増えました。逆に歴史が15年しかないので、大人が知らないのは自然なこと。安心してもらっていい。


――では、実際にパソコンを使ってお話を進めましょう。

タツナミシュウイチ氏:
マインクラフトは元々パソコンでプレイするゲームとして生まれました。操作は基本的にキーボードとマウスを使います。


マインクラフトは、パソコンのキーボードやマウスを使って土を掘ったり、ブロックを積み上げたり、移動したりすることができます。何もない世界に自由に建物や街を作ることができるゲームです。


タツナミさんには家を建ててもらった。


――早いですね。外から作るのですね。

タツナミシュウイチ氏:
そうです。まず外から作ります。本当は整地してから作るのが理想です。物を立てていくのが好きな人もいます。ガラス窓、これはガラスです。このブロック1個ずつの大きさは一辺1mと決まっています。人間と比べると、身長が大体2ブロック分になります。 さて、この1mのブロックをたくさん積み上げて、こんな感じで家を作っていきます。


――これだけで家ができるのですね。

タツナミシュウイチ氏:
そうです。素材が1mと決まっているので、実際の建物と同じ寸法で作り上げることもできます。設計図を引くことで、同じ大きさの建築物を造ることも可能です。階段ブロックを使うことで、屋根の代わりにすることもできます。 大人なのでサクサクやっているように見えますが、慣れている子どもたちもこの速さで作ります。好きに遊んでいいのが、マインクラフトです。 ボックスを組み合わせることによって何かを作れる、まさに砂場という意味で、マインクラフトのようなゲームは「サンドボックスゲーム」と呼ばれています。

自由に何をしてもいいという世界がマインクラフトのワールドです。大人が砂遊びをしようと思っても上手くできないですが、子どもは好き放題します。デジタルの世界でも同じ現象が起こっている。


マインクラフト 大人も楽しめる?

――大人が楽しむためには、どうしたらいいのか。

タツナミシュウイチ氏:
子どもの気持ちを思い出しながら遊ぶのが一番です。


――水に入りたいけど、いいのかな、とか、大人になるとそういうモードになってしまいます。溺れるんじゃないか、アイテムを身につけなきゃ、と考えてしまいます。

タツナミシュウイチ氏:
「いってみよう、やってみよう」の心です。子どもならすぐに飛び込みます。気がついたらどこに行ったかわからないぐらい自由に動きます。自由に動く中で、「これ何だろう」「あれなんだろう」「叩いてみよう」「花が手に入った」「植えられるかな」「植えてみよう」と、どんどん進んでいきます。


自由に想像したことを形にできるマインクラフト。では、マインクラフトと教育はどのように結びついているのでしょうか? 


タツナミシュウイチ氏:
マインクラフトの世界に学びの要素を散りばめると、知らない間に吸収してくれる。マインクラフトを使ってポジティブに捉えてもらう伝え方が、教育の一端を担っていると思います。


マインクラフトでどんな仕事をしている?

――少し触っただけで興味が湧いてきました。タツナミさんが15年間やってきた中で、どのような取り組みをしていますか。

タツナミシュウイチ氏:
私は物を作ることが大好きなので、マインクラフトでも「世界を作る」ということをやっています。世界中の建物や、創造することが主な活動です。


――例えば、国会議事堂をマイクラで作るとか?


タツナミシュウイチ氏:
そのようなイメージです。実際に作ったものをご覧いただきたいです。ブロックを集めて、組み合わせたり積んだりして、大きなものが作れるようになります。私はお城が大好きで、お城を作ったりしています。これはマインクラフトの世界でのオリジナルのお城です。自分で設計して作りました。


EDO BON DANCEは江戸時代の町をイメージした架空の世界。盆踊りや花火を楽しめるこの作品は、タツナミさんがイチから制作し、配信や販売もしています。


――すごいですね。

タツナミシュウイチ氏:
天守閣だけでなく、縄張り全て、本殿のお屋敷、お堀など。大手門があり、その先に武家屋敷、向こう側には長屋、商店街、神社があります。江戸の町を再現したワールドで、「EDO BON DANCE」という名前で世界中に配信しています。


――鬼平犯科帳のような世界ですね。

タツナミシュウイチ氏:
まさにその世界です。港や船があって、神社やお稲荷神社、1,000本の鳥居、農家など、いろいろなものを作っています。


――自分で町を作ったのですね。

タツナミシュウイチ氏:
城下町を一つ作れたという感じです。子どもたちに大事なメッセージに繋がる取り組みとして、東京大学で研究している平和学習教育があります。長崎の浦上天主堂という建物を作ったワークショップをご覧いただきたいです。


――長崎ですね。

タツナミシュウイチ氏:
実は、長崎の子どもたちが作りました。70数年前の長崎の町にあった建物を5つ、みんなで作ってみようというワークショップを行った。


「教育版マインクラフトで長崎の歴史を学ぼう」は、原爆投下前の長崎の暮らしと町並みを再現し、町作りを通して歴史を学ぶワークショップ。


タツナミシュウイチ氏:
右下の神社は片方しか残っていない一本鳥居ですが、かつての姿を再現しました。文献や写真を調べ、当時暮らしていた方のお話を聞き、自分たちで絵や設計図を描いて、1日かけて平らな場所に建物を作りました。


マインクラフトの活用×平和学習

「よくできた」と褒めた後、コマンドを走らせると、上空に赤い丸い球の爆弾が現れます。「これから火をつけます」と言うと、子どもたちは「やめて」と青ざめます。自分たちが頑張って作ったものが壊されるのは嫌だと、泣きながら訴える子もいます。「わかった、やめる」と消します。そして、「同じことが本当に起こったんだよ」と歴史に繋げます。すると、子どもたちは真剣に聞いてくれます。 戦争の悲惨な歴史は、写真や教科書だけでは伝わりにくい。子どもたちが作ったものが壊されるという感情で訴えかけられるのが、東京大学で取り組んでいる平和学習教育です。物を作るからこそ大切にして欲しいという気持ちをマイクらと通じて、伝えられます。


――浦上天主堂や当時の日石病院など、写真だけではわからない痛みが伝わります。

タツナミシュウイチ氏:
残酷な写真も多く、子どもたちにとって見づらいし、伝えづらい。地元には「覚えておいて欲しい」「二度と繰り返して欲しくない」という思いを持つ方が多くいます。マインクラフトを使ってポジティブに伝えることが、教育の一端を担っていると思います。


――自分が作った建物に魂がこもっていると感じますよね。

タツナミシュウイチ氏:
同じ気持ちで作った人たちがいたとわかってくれるだけで十分だと思います。


教育現場でマインクラフトを普及させるには?

――教育の場で使うには、先生方が習熟したり理解したりする必要があります。普及についてはどうですか。

タツナミシュウイチ氏:
そのために仕事しています。自分と同世代の方や先生、保護者から「ゲームですよね」と言われます。「どのくらいやらせていいか」と聞かれますが、時間をきちんと取り、目的意識を持って取り組むことで、教育のプラットフォームとして使えます。

マインクラフトを使うメリットは子どもたちが楽しんでくれること。どんなに素晴らしい知識が詰まった本も、興味がなければ触れられません。マインクラフトは子どもたちが「やりたい」と思うので、学びの要素を散りばめると、遊んでいるうちに吸収してくれます。テスト後に忘れる知識ではなく、大人になっても思い出せる知識になると思います。ゲームのデメリットだけにフォーカスせず、メリット・良いことも伝えるようにしています。


マインクラフトの世界は平等

――子どもたちはすぐに楽しんで進みますが、大人は失敗を恐れたり、振る舞いに悩んだりします。

タツナミシュウイチ氏:
失敗を心配している先生たちは確かにいる。子どもたちはマイクラのプロフェッショナル、先生は教育のプロフェッショナルです。お互いの良いところを発揮し合うのがマインクラフトのワールドです。大人も子どもも同じアバターで平等です。お互いの特技をシェアできるのが、マインクラフトのマインド。詳しくなくても大丈夫です。先生は子どもたちから操作を学び、世の中や科学、歴史を教える。協力して作ることで授業は円滑に進みます。

マイクロソフトの中では、大人やこども関係なく動くことができる。足が不自由な人でも飛び跳ねられる。他の子と同じように活動できる。身体にハンデがある子も、言葉が出にくい子も、平等に活動できるのがマインクラフトのメリットとして先生がタイにもみていただきたい。
年齢や性別、人種を越えた平等な世界がそこにはあると思う。


――画面を見ながら、もどかしさやドキドキを感じる。

タツナミシュウイチ氏:
コミュニケーションが生まれます。それが楽しいです。


――続いてお話しいただくテーマは何番でしょうか。


タツナミシュウイチ氏:
11番の「住み続けられるまち作り」です。 


――世界作りに挑戦するマインクラフトですから、建物作りに関連しますね。SDGsの11番「住み続けられるまち作り」に向けた提言をお願いします。


タツナミシュウイチ氏:
地球8個分の都市計画を次の世代へ。


――どういうことでしょうか。

タツナミシュウイチ氏:
マインクラフトのワールドの最大範囲は地球8個分の面積に相当します。理論上、その広さまで作れます。過去、現在、未来の地球を再現しても余裕があります。自分たちの街を作るのは小さな話です。


地域活性化のアイデアをマインクラフトで提案

タツナミシュウイチ氏:
福井県で高校生たちが「デジタル帰宅部」という取り組みをマインクラフトで行っています。三国港や東尋坊、丸岡城など、観光客が減り、盛り上がりがなくなった地域を何とかしたいという自治体の思いがあります。マインクラフトが好きな高校生たちがカフェやバンジージャンプのアイディアを出し、どんどんワールド内で作ります。それを坂井市長にプレゼンすると、「面白いから来年お金を出してやろう」となり、実際に古い建物をカフェに改装し、高校生が店員として働くプロジェクトが始まっています。彼らのアイディアが地元のために広がっているのです。余裕で受け入れてくれる広さがあるのがマイクロソフト。


――その広さ感は大事ですね。

タツナミシュウイチ氏:
地球の大きさの図面は書けませんが、マインクラフトなら再現できます。新しく作り出すことが大きな魅力です。調べることで学びになり、地元の歴史や大切なものを再発見する機会にもなります。


東日本大震災“記憶の街プロジェクト”

――東日本大震災のとき、気仙沼の大沢で「記憶の街プロジェクト」を取材しました。津波でやられた地域の地図を作り、避難所暮らしの皆さんが家や施設の位置を落とし込み、発泡スチロールで家を作って地図に載せ、配置を動かして新しいまちを作りました。マイクラがあればもっと楽だったと思います。


タツナミシュウイチ氏:
実は、その模型を参考にさせていただきました。2019年頃、釜石でワークショップを行い、子どもたちと一緒に何があったのかを見に行き、インプットの段階で模型を見て勉強しました。「よく出来てるね」と、釜石のスタジアムをマインクラフトで合宿して作りました。フィールドワークをして、同じスタジアムを再現しました。アナログでやってくださったことと同じで、お互いにいいところがある。デジタルだけでは実感がわかない部分もあるのでフィールドワークをした。アナログの良さ、リアルの良さも子どもたちに伝えています。


アナログ×デジタルの共鳴

――街全体をもう一回作り変えることはマインクラフトだとできるのか。

タツナミシュウイチ氏:
マインクラフトできます。駅前の再開発や学校を楽しくするアイディアをシミュレーションできます。マインクラフトの世界をリアルにしていくこともできる。


未来をマインクラフトで具現化できる

――子どもたちが40年後の街をここで作ることもできる。

タツナミシュウイチ氏:
こどもたちが40年後、思い出して実現することで、暮らしやすいまちや多様な人々が暮らせる街が現実化して生まれるのではないか。


――SDGsは今あるものを貼り直す感じですが、マイクラなら全部作り直して新しい地球を作れますね。SDGsツールですね。

タツナミシュウイチ氏:
大学で学生にSDGsのテーマを選んで解決方法をマイクラで作る課題を出します。


――マイクラで表現することで精度が高まり、深まる気がする。

タツナミシュウイチ氏:
入り口としても簡単。1時間プレイすれば自由に動けるようになります。子供たちも同じ。


――学生に教えることを考えますが、彼らがマイクラで何を開くのかを見守ることが大事だと感じました。

――グラデコの記録をご覧になっていかがですか。


タツナミシュウイチ氏:
私が伝えたかったことを視覚的にわかりやすく表現しています。自分の子どもたちに「パパ、こういう仕事してるんだよ」と言いたいですし、教えている子どもたちにも「マイクラはこういうものなんだよ」と伝えられます。マイクラの良さを的確に伝え、感動しています。


――マイクラ“で”学ぶことが、好きになることで知識を吸収することに繋がります。すごいものに出会った気がします。明日からみんなにマイクラをやってるか聞きたくなりました。

タツナミシュウイチ氏:
嬉しいです。ありがとうございます。


SDGs=マインクラフトを使って思いを伝え、より良いものを後世に残したい

――改めて、タツナミさんが考えるSDGsとは何ですか。

タツナミシュウイチ氏:
子どもの頃から物作りが好きで、さまざまな仕事をしながら物を作ってきました。今は教育の仕事に就いていますが、きっかけは自分の子どもたちが生まれたことです。彼らのために将来に繋がるものを作りたい、いままでやってきたものづくりは、ヒトづくりに繋がるかもしれないと思いました。そのお手伝いが出来たらいい。

マインクラフトを使って思いを伝え、より良いものを後世に残したいです。これからもマイクラとともに生きていきたいです。


(BS-TBS「Style2030 賢者が映す未来」2025年7月20日放送より)


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