2000円程度の備蓄米の販売が広がるなか、今年の新米価格はどうなるのでしょうか?田植えが終わったばかりのコメ農家には、すでに取り引きの交渉依頼が殺到しているようです。
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なぜ「概算金=前払い金」が必要?
井上貴博キャスター:
今年の新米の価格はどうなっていくのでしょうか。コメの価格に影響を与える「概算金」が早期に決定しています。
「概算金」とは、JAがコメを出荷した生産者に支払う「前払い金」です。この概算金は、その年のコメの小売価格に影響を及ぼす大変重要な意味合いを持っています。
例年、概算金が決まるのは7月末から8月ですが、今年は早い地域で3月に決まっています。
農水省OB 日本国際学園大学 荒幡克己 教授
「3月に示すのは異例。早期に提示することで農家を囲い込みたい」
JAグループが生産者に対して、概算金を渡します。それによって新米がJAグループに渡るということですが、なぜ先払いをしなければいけないのでしょうか。
JAグループが先にお金を渡すことで、受け取った生産者は新米の次、来年以降のコメ作りをしなければいけないので、先にお金をもらって来年以降のコメ作りに充てるというわけです。
コメの流れとしては、生産者から、JAグループ、そして、卸・小売業者を経て、消費者の手元に届くことになります。
そのときのコメ価格は、概算金が元になっているので、概算金が上がれば、コメ価格も上がります。
今後のコメの価格を占うには、概算金を見ていく必要があると言われているので、ニュースで概算金が注目されているわけです。
また、小泉農水大臣も話していましたが、卸売業者が一次から五次くらいまであり、この卸売業者の過程でコストが上がり、コメ価格が高くなっているのではないか、まさに「ブラックボックス」と言われている部分でもあります。
経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
小売・卸は役割もありますが、やはりコストがかさんでいくので、小売・卸を少しスリム化していくのは農政の改革の一つだと思います。
「値段を吊り上げることで業者に対抗」 概算金はいくらに?
井上キャスター:
では、実際にすでに提示されている概算金を見ていきます。地域によって変わりますが、「JA全農にいがた」と「JA会津よつば(福島県) 」の例です。
2025年度の最終決定は8月ごろだそうですが、もうすでに見えてきている60キロあたりの値段です。
【JAの新米概算金】※1等米(玄米)コシヒカリ 60キロあたり
・JA全農にいがた:2万3000円(前年当初比+6000円)
・JA会津よつば(福島県):2万5000円 (前年当初比+4800円)
金額が決まるのも早く、金額が上がっているのがわかると思います。
なぜ上がっているのでしょうか。
担当者によると、JA全農にいがたは「資材高騰の中、農家と消費者双方が納得する金額」、JA会津よつばは「値段を吊り上げることで、農家を囲い込む業者に対抗するため」だということです。
いま、JAを通さない業者が出てきています。概算金を引き上げ、そういった業者にコメ農家が流れないようにしないと農家たちがJAにコメを渡してくれない。そのため、JAとしては概算金を引き上げているそうです。
では、今年の新米価格はどうなりそうなのでしょうか。
農水省OB 日本国際学園大学 荒幡克己 教授
「生育状況が悪くなければ、5キロ3500円程度というのがベース」
1年ほど前は5キロ2000円くらいで現在は、5キロ4000円を超えていて「非常に高い」と言われています。
経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
結局、需要と供給で、供給量が増えれば価格は下がるんですよね。
政府関係者に聞くと、石破総理は6月中旬ごろまでには3500円台、3000円台半ばぐらいにしていきたいという思いがかなり強いようです。
実際に、輸入を受け入れるという言葉は、口先介入かもしれませんが、一部のコメ価格には影響を与えますよね。
井上キャスター:
市場への安心感をどう与えていくのか政治家が、手を変え、品を変えメッセージを発信しているということになるわけです。
提示額「3万5000円から4万円」 JA通さない動き
井上キャスター:
今まではJAを通すので概算金の話をしてきました。今度はJAを通さない動きです。
2025年の作付面積は160ヘクタールだという千葉県内のコメ農家は「今年の新米について、2月から3月ごろから、米穀問屋による問い合わせが増えている」と話していました。
提示された金額は、3万5000円から4万円(玄米60キロ)で、収穫予定の約8割がすでに契約済みだということです。
JAから概算金で提示されるのが2万円台で、JA以外からは3万5000円から4万円を提示されるという状況なんですね。
出水麻衣キャスター:
新しいトラクターや農具などが欲しかったら、高いところで売ろうと思いますよね。
井上キャスター:
やはり今は肥料代、燃料代、設備投資にもお金がかかり、そして値段が上がっています。
千葉県内のコメ農家は「概算金が3万円くらいないとJAにコメは集まらないと思う」と話していました。
JAの概算金は2万3000円や2万5000円でした。この時点でも、前年比で6000円や4800円高くなっていますが、対抗する形で概算金が上がったら、コメ価格も上がるということになります。
「コメ価格が異常だから下げていこう」という政府はどうしていけばいいのか。農水族は嫌がっていますが、輸入米という手もありますね。
経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
アメリカの関税交渉も絡んでいて、関税の割合を下げて欲しいというニーズがありますが、そのときにアメリカのコメを受け入れるかも交渉のツールなんですね。
一時的に輸入米を受け入れて価格を下げ、長期的には日本が輸出できる体制にするという二つの軸で考えていくべきだと思います。
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<プロフィール>
馬渕磨理子さん
経済アナリスト
日本金融経済研究所代表理事
“日本一バズる”アナリスト
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