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「試験管ベビー」という偏見を打ち破れ(1983年)【TBSアーカイブ秘録】

国内
2025-04-23 12:00

1978年、イギリスで世界初の体外受精による最初の赤ん坊が産まれました。このことは大いに社会の関心を集めましたが、同時に「試験管ベビー」という偏見は関係者を悩ませたのです。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)


【写真で見る】2000年代には、毎年数万人規模で体外受精児が誕生するように


いわゆる「試験管ベビー」日本でも誕生

1978年、イギリスで誕生した「体外受精児」この当時で言う「試験管ベビー」は、世界中に大きな衝撃を与えました。


体外受精児は母の卵子と父の精子を取りだし、受精させて培養した後に母体に戻すというもので、現在では普通に行われています。


イギリスに遅れること5年の1983年、日本でも初めての体外受精児が誕生しました。
新聞やテレビが「日本初の試験管ベビー誕生」と大きく報じ、社会の関心を集めました。


偏見と無理解が飛び交う中、赤ちゃん死亡

当時の日本では、体外受精への理解が乏しく、「不自然な命で神への冒涜」「人工的に作られた子供」といった否定的な声が少なからず存在していました。そこから「試験管ベビー」というあたかも「人工的に作られたSFのような生命」という偏見が生まれたのです。


しかも、最初の体外受精児が風邪をこじらせてわずか2年で亡くなってしまったことが、その偏見に追い討ちをかけました。
不妊に悩むママパパには大いに福音であったのにもかかわらず、体外受精自体に否定的な考えを持つ人は多かったのです。


勇気あるふたりが世間を変えた

ところが、この世間の風潮に抗った2人の女性がいました。
青木美代子さんと、大槻浩子さんです。この2人は体外受精を実名で公表し、体外受精児は普通の分娩で産まれた子供となんら変わらないことを訴えました。


特に大槻さんは自らの手記『「体外受精」日記 不妊治療8年目の赤ちゃん』を出版し、リアルな体験から「偏見は間違っている」ことを示し、不妊に悩む女性たちに、道筋を残したのです。
このふたりの勇気ある行動もあり、体外受精児に対する偏見は次第に収まっていきました。


もはや普通の妊娠出産

1990年代以降、日本でも不妊治療の需要が急速に増加し、それに伴って体外受精の実施件数も増えていきました。


2000年代には、毎年数万人規模で体外受精児が誕生するようになり、もはや、まったく「特別な存在」ではなくなりました。2019年には、日本での体外受精による出生数が5万人を超え、全出生数のおよそ15人に1人が体外受精児という時代になっています。


一方、さらなるハードルが

2010年、ロバート・G・エドワーズ博士は、体外受精の技術を開発したことで、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。


その一方、こうした「通常の体外受精」と異なり、他人から卵子・精子を提供される場合や、いわば「お腹だけ借りる」代理母出産など、より複雑な事例も出てきました。


日本では生殖補助医療に関する法整備が進んでいるとはいえず、これらの問題、精子・卵子提供者の情報を開示すべきかなど、当事者をめぐる問題も新たな課題として残されています。


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