日本肥満学会は若い女性の過度な「やせ願望」に警鐘を鳴らしました。SNSや雑誌などで浸透している、「やせていることが美しい」とする価値観。皆さんはどう思いますか?
【写真でみる】Q.最近の若い女性はやせすぎだと思う? みんなの回答は…
過度な「やせ願望」学会が警鐘
大学生 20歳
「街中にも一般人の人で、めっちゃ細い子がいるのを見ると『細いな』というのと『体形管理どうしているんだろう』と気になる」
個人事業主 30代
「普段は分からなくても、友達と並んで写真を撮ったのを見ると、『私ってこんな感じなんだ…』とショックを受けたりとか」
専門学生 18歳
「やせたいなと思います、ダイエット。周りから見られたりしたら、やせたいと思う。やせている人のほうがかわいいみたいな、あるよね、そういう風潮」
こうした「やせ願望」に日本肥満学会は警鐘を鳴らします。
日本肥満学会 小川渉 常務理事
「肥満は健康障害のリスクですが、低体重もやはり健康障害のリスク」
20代女性の5人に1人が、肥満度を示すBMIが18.5未満の低体重=「痩せ」とされていて、先進国の中でも特に高い割合となっているのです。
若い女性のやせ過ぎや栄養不足は、骨密度の低下、月経周期の異常などの健康障害、不妊などの影響を及ぼす可能性があります。
やせ過ぎている女性が増えている背景について…
女性の低体重/低栄養症候群ワーキンググループ 田村好史 副委員長
「SNSやメディアから『やせている方がいい』『綺麗だ』と、そういうことに強く影響されてダイエット、やせ願望を持っているような方々が一番多くいるのではないかと考えます」
日本肥満学会は、「女性の低体重/低栄養症候群」を新たな症候群として位置付けるためのワーキンググループを立ち上げると発表しました。
なぜ、やせ過ぎてしまうのでしょうか?
大学生 18歳
「卒業式にやせて出たくて、ダイエット頑張りました」
会社員 18歳
「周りにかわいい子がいすぎて、やせたいなと思って」
大学生 19歳
「他人からどう見られているか、気にする人は多いと思う。食べない食事制限をする人が多いと思う」
高校生
「実際にテレビを見ていても、かわいいアイドルって全員細い。K-POPがいま流行りですけど、K-POPのアイドルたちも細いので、そういうところに憧れをもってどんどん細くしているのかなと」
大学生 20代(女性)
「(私は)上半身が結構がっちりしている、太ももが太いので嫌だなとか」
大学生 20代(男性)
「僕自身は全然思っていないですけど、理想の体形があるなら近付ければいいと思う」
“女性やせすぎ”日本肥満学会が警鐘
小川彩佳キャスター:
皆さんはどう思われるでしょうか、吉野なおさんにお話を伺っていきます。日本肥満学会が「やせ過ぎ」ということに警鐘を鳴らしました。これについて、まずどんなふうに感じましたか?
プラスサイズモデル エッセイスト 吉野なおさん:
そもそも日本肥満学会というのは日本の肥満の判定基準を決めているところです。やはり、太り過ぎを予防するというイメージだったのですが、やせ過ぎを警鐘するというのにはすごくびっくりしました。日本でもやせ過ぎを警鐘するような流れがきたことが個人的には嬉しいです。
藤森祥平キャスター:
吉野さんは小さい頃からご自身の体験に悩まされていて、思春期の頃にダイエットに夢中になった時期があった。「痩せたら付き合おう」と好きな人に言われたこともあって、かなり無理な食事制限をされた。30キロ減量って相当ですよね。
吉野なおさん:
そうですね。かなりハードな食事制限と運動もやっていました。
藤森キャスター:
まだまだ減量をやろうと、当時は決めていたのですか?
吉野なおさん:
ずっとしんどいとは思っていたのですが、なかなか止められませんでした。太るのが怖くなってしまって、止められない、どうしたらいいんだろうという感じになっていたのですが、ある時、たくさん食べる過食症の方に転じてしまった。どんどん太っていく自分を醜く感じ、ネガティブな方に行ってしまいました。
小川キャスター:
当たり前に、やせることを目標にする選択肢しかなかったという感覚でしょうか。
吉野なおさん:
そうですね。毎日、朝起きて自分の体重を測って、減っていたらハッピー、増えていたら落ち込んでいました。
藤森キャスター:
もう少し街の皆さんの声を聞いてきました。ご覧ください。
大学生 20代
「モデルやキャラクターも細い子が多いので、そっちのほうが良い風潮はある」
高校生
「友達といるときに『あ、自分太ってるかも』って思うと、『(ダイエット)しないといけないのかな?』と思ったりする」
大学生 10代
「『太ってたら嫌だな』みたいなことを思っている人の方が多いと感じる。小学生のとき、それで周りから、からかわれたりとか」
会社員 20代
「ぽっちゃりが好きな男子もいるが、そのぽっちゃりがどこまでか分からない。やせたい、お腹はへこませたいなとは思う。やせてる人がモテてる感じがする」
やせたい願望 小学1年生までも
藤森キャスター:
皆さんそれぞれ受け止め、感じ方に違いもあると思います。データをご紹介します。小学生のアンケートで「やせたいと思う」女の子の割合です。小学校6年生は50.5%、小学校1年生でも35.5%が「やせたいと思う」と回答しています。どういうものが影響しているのかと思います。斎藤さんは最近ダイエットされていると聞きました。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
プロテインを飲んでいます。1年半ぐらい筋トレなどダイエットをしていて、食べるものも気にして、約7キロ痩せました。
藤森キャスター:
何を意識しているのですか?
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
メディアとかに出る中で、座り仕事ですし、中年化すると、ちょっとかっこ悪いという意識がないと言ったら嘘になる。カロリーなど、数字で人生を管理するというのは、ある種の快楽であるのは事実だと思います。
好きでそこそこでやっているからいいと思いますが、VTRを見ていても、特に女性がSNSや広告の影響で過食や拒食になってしまうというのは問題だと思います。自分らしく生きられる価値の軸自体は、社会全体としてもっともっと多様化していくべきではないでしょうか。
藤森キャスター:
そうなんですよね。価値を多様化する手法をどうするかということですよね。
美のあり方 ファッションショーでは
小川キャスター:
女性だけでなく男性も、価値観に囚われている部分があるのかもしれないですね。
美の多様化というところで言うと、ファッション界は逆行しているのではないかというデータがあります。Vogue Businessによると、ニューヨーク、パリなどのファッションショーで、ミッドサイズ・プラスサイズモデルの起用が、2024年の秋冬は0.8%だったのが、2025年の秋冬は0.3%と減っています。増えていくと思いきや、揺り戻しと見る節もあります。
吉野さんは2021年に番組で一度取材させていただいていますが、そのときから風潮が逆行している感覚があるのか、むしろ進んでいるという感覚でしょうか。
吉野なおさん:
私は地味に進んでいるとは思います。ムーブメントとしては数年前の方が多様性という言葉が使われていたと思います。SNSを見ているとアパレルブランドのショップでプラスサイズの店員さんが着用イメージを見せていたりするので、ちょっとずつ進んでいる感じがします。
小川キャスター:
確かに、いろいろな体型のモデルさんを、いろいろな媒体で見るようになりました。
藤森キャスター:
時間はかかるというところではありますが、視聴者の皆さんにもアンケートでお聞きしています。「最近の若い女性はやせすぎだと思う?」という質問です。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせると7割を超えます。井沢さんはどうですか。
株式会社 QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
前提として今回の肥満学会の話は、健康上「やせ」を目指し過ぎる危なさの話であって、痩せているのが駄目という話ではないです。太っていることと同じように、やせたくないのにやせているということに悩む人もいる。そのあたりは分けて考えないといけないというのが一つあると思います。
その上で、美の多様化も大事なのですが、その一歩先がもっと大事だと思います。美の多様化というテーマはそもそも美しくあるべき、形はどうあれ美しくあるべきという社会からの要請を含んでしまっている。多様な美があっていいという言葉の中には、でも美しくないと駄目という要請が入っている。
何かしらの美しさがあるべきということは、多様性ではないと思います。本当に多様だったら「美しくなくてもいい」であるべき。個人がどう思うかというのは自由なので、人と切り離された状態で、自分だけのために他人の迷惑にならない範囲で美を目指したり、目指さなかったり、好きにするのが本当の多様性だと思う。
他人に望まないこと、というのが我々のできる第一歩だと思います。「こうあるべき」「この人は太っているから自分の代弁者」「痩せているから私の理想像だ」など、本当はアイドルは痩せたくて痩せているわけではないかもしれない。
そういったことを他人に求め過ぎること自体が、我々の人生を窮屈にしている気がする。自分は自分、他人は他人、価値観が社会が繋がりすぎて流れ込んできてしまうので、一回それをシャットアウトして、自分のために生きるということに注力した方がいいのかなと思います。多様性の罠に陥らないようにしたいです。
小川キャスター:
他者と切り離して自分の軸で自分を見るというのは、SNSがある中で特に難しくなっているようにも感じます。
吉野なおさん:
SNSで1つダイエット投稿を見ると、どんどんおすすめとして出てきて、偏った情報まみれになってしまうので、気をつけていきたいです。
藤森キャスター:
小学生のアンケートで「やせたいと思う」女の子の割合を見ると、小さい子供に対してどういうアプローチをしていけば、痩せなきゃいけないと思わなくて済むのでしょうか?
吉野なおさん:
私は、自分が劣等感まみれの子供だったので、人と比べていたのですが、その子がそこにいていいということを、親や大人世代が伝えていくことが大事だと思う。
今の親世代も痩せたいと思っている方が多いので、「痩せなさい」とお子さんに言っているかもしれない。それが行き過ぎちゃうと、私のようにダイエットに囚われた人生の子も出てきてしまう。
小川キャスター:
どんな声かけ、どんな寄り添い方っていうのが必要になってくると思いますか。
吉野なおさん:
世の中にはいろいろな人がいていいと、小さい頃から伝えていくことが大事だと思います。
小川キャスター:
世の中にはいろいろな人がいていいといった言葉を、どんどん社会に増やしていくということもあるのでしょうか。
藤森キャスター:
斎藤さんはダイエットを無理しないでください。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
そこそこにやっていきます。
女性の「やせ願望」について、みんなの声は?
NEWS DIGアプリでは『女性の「やせ願望」』について「みんなの声」を募集しました。
Q.最近の若い女性はやせすぎだと思う?
「そう思う」…29.0%
「どちらかと言えばそう思う」…41.4%
「あまり思わない」…23.5%
「全く思わない」…3.0%
「その他・わからない」…3.2%
※4月17日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは18日午前8時で終了しました
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<プロフィール>
斎藤幸平 さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
ドイツ在住 著書『人新世の「資本論」』
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中
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