おととい(2日)、埼玉県行田市のマンホールで男性作業員4人が死亡した事故。硫化水素が原因とみられていますが、現場での安全管理の問題も指摘されています。
基準値15倍以上の硫化水素が検出
山形純菜キャスター:
8月2日、埼玉・行田市のマンホールで男性作業員4人が亡くなった事故。どういう状況だったのでしょうか。
事故現場の近くには、忍川が流れています。そのためマンホールは12.6mと通常よりも深くなっています。
直径2.6mの下水道管に繋がる構造で、下水道管の中には、水やヘドロが溜まっていたということです。
男性作業員は点検作業のためにマンホールに入り、転落しました。はしごを降りている際に意識を失ったとみられています。
点検作業を行っていた「三栄管理興業」によると、マンホールでは基準値の15倍以上の硫化水素が検出されたということです。
警察によると、作業員4人は硫化水素を吸い込み、転落したとみられています。
4人のうち2人の死因は硫化水素中毒、残る2人は窒息とみられています。
専門家「悪条件が重なって発生したのでは」 雨が降らないことで…
山形キャスター:
なぜ基準値15倍以上の硫化水素が発生したのでしょうか。
下水道管の仕組みには、▼雨水と汚水を一つの下水道管に流す「合流式」、▼雨水と汚水を別々に流す「分流式」の2つのタイプがあります。
今回事故が起きた下水道は「合流式」ですが、事故が起きた要因に“天気”も関係しているようです。
「合流式」「分流式」どちらの場合でも、下水道管の中に溜まっているヘドロなどの有機物を、バクテリアが食べることで硫化水素が発生しやすい状況だということです。
「分流式」はそれぞれの管が細く、基本的に人は入らず、カメラなどで点検を行うといいます。一方、「合流式」の場合、通常、硫化水素が発生しても雨水で流されてとどまりにくいということです。
しかし、このところ晴れていて、ほとんど雨が降っていませんでした。雨が降らないと、下水道管の中は、▼水の流れは遅く、▼滞留時間は長く、▼水温も上昇するため、“硫化水素が発生しやすい環境”になっていたとみられます。
上下水道に詳しい近畿大学の浦上拓也教授は、「悪条件が重なって、通常よりも高濃度の硫化水素が発生したのではないか」と指摘しています。
井上貴博キャスター:
作業員はプロですから、雨が降らないと硫化水素が高濃度になる可能性があると分かっていたかもしれません。しかし、大量にあるマンホールの検査に追われていたのかもしれません。非常に痛ましい事故が起きてしまいました。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
想定外だったとしても、4人亡くなっているということが本当に悲しいです。
マスクが用意できていなかったということですが、「少しの検査だから…」など、いろいろあったのかもしれません。
検査に「慣れすぎていたのか」「慣れていなかったのか」など、検証する必要はあると思います。
出水麻衣キャスター:
今回の事故を受けて改善できる部分があるのか、検証作業が必要ですね。
「吸い込んだ瞬間に気絶の可能性」事故当時の硫化水素の濃度
山形キャスター:
「硫化水素」とは、温泉などでも発生するものです。
有害物質に詳しい福岡大学の佐藤研一教授によると、「通常は空気で薄められているが、下水道管の中など、閉ざされた空間に高濃度で充満しているとかなり危険」だということです。
硫化水素濃度は基準値が10ppmとされています。事故当時は15倍以上の「150ppm以上」だったということです。
福岡大学の佐藤研一教授によると、150ppm以上というのは「吸い込んだ瞬間に気絶する可能性もある」といいます。
【硫化水素濃度】厚労省HPより
5ppm程度:不快臭
10ppm:許容濃度
20ppm:気管支炎・肺炎など
350ppm:生命の危険
700ppm:呼吸まひ・昏倒・呼吸停止・死亡
井上キャスター:
専門家によると、高濃度であればあるほど、においが感じにくくなるという性質もあるようです。
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<プロフィール>
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶応義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰
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