
参議院選挙の結果は与党惨敗、参政党と国民民主党の躍進という展開となりました。なぜこのような結果になったのか、そしてこれからの日本政治はどう動くのか。政治の最前線を共同通信特別編集委員の久江雅彦さんにききました。(聞き手:川戸恵子 収録:7月24日)
【写真で見る】トランプ関税15%で妥結も迫る「防衛費GDP比3.5%」要求という新たな難題 選挙後の政界再編図を読み解く
50代が分岐点 二分される情報接触ツール
ーー今回の参院選での投票先を年代別にしたものですが、ご覧になっていかがですか?
共同通信 特別編集委員 久江雅彦氏:
今回の選挙を見事に象徴している図ですね。20代、30代を見てもらえばわかりますけども国民民主党、参政党が多いですね。40代ぐらいからやや微妙になってきて50代と。
これ、実はいわゆる日本国民がどこから政治の情報を得ているのかというグラフと符号するんですね。40代以下は、テレビや新聞よりも、インターネット、SNS、そこから情報を取る人が若くなればなるほど多くなるんです。逆に50代を分岐点として、年配になればなるほど、ネットよりもテレビ・新聞なんですね。
振り返ってみますと国民民主党は「手取りを増やす夏」、参政党は「日本人ファースト」。ある意味過激な部分とか鋭角的な主張。これがショート動画や、あるいはSNSでバズるわけですよ。
他方、自民党や立憲民主党のように、あれもやりますこれもやりますっていうファミレスというか総合デパートというか。結局SNSとかネットの特性では、全然バズらないんですよ。一点集中で鋭角的に単品料理でどんと出すのがバズりやすい。
参政党の求心ということで言えば7月3日の公示以降ですね、いわゆる国会議員が5人になって、地上波含めて一般の旧来メディアにも出るようになりましたね。
そうしますと50代より年配の方にも参政党ってのがあるんだって、こっちの層にも見せるわけですよ。テレビに出たよっていうことが、またネットにも出るっていうことで相乗、雪だるまのようになっていくと。だから今国民はその政治を見ているまでが大きく二つあるっていうことが、この図から如実にわかるわけですよね。
深読みするとですね、都議選もそうですし、今回の参議院選挙もいわゆる公明党であるとか共産党であるとか、旧来、強い組織票があったところが相当票を減らしてますよね。人口減とはいっても新しい有権者が増えてくるわけですから、その人たちが既存政党にいくかというとそうではなくて、それを主にネットが拾ってるという。
参院選後の政界再編「花道」としてのトランプ関税解決
ーー参院選惨敗後、石破さんは早々と続投宣言しましたけれど、それに反発の声が上がったところで“トランプ関税”が急転直下で決着をしましたね。
久江雅彦氏:
7月20日の参院選の前まではある程度大詰めに来てるよねっていう見方はあったんです。その前も結構いいとこまでいったけども、また振り出しみたいなこともあったらしいんですね。ですからこの話というのは一般的な積み上げと違って、トランプさんがイエスというかノーかというね。その観点で言いますと、トランプさんのSNSで報道されたのが昨日(7/23)の午前、確か8時過ぎぐらいだったと思うんですが、一昨日の夜の11時前後に石破さんのところに「どうもいけそうだ」と連絡が入って、昨日の早朝6時に「合意しました」というのは事前に入るんですね。これは林官房長官と石破さん2人だけの極めて厳重な秘密保持がなされていたと。
でもそれがあったから続投を決めたわけでもないし、むしろ私はひと区切り、関税については責任を持ってやると。できれば本当はですね、おそらく水面下でやってるんでしょうけども訪米をしてトランプさんと直接会談をして正式合意ということまで今視野に入れてるんですね。ただし今の自民党のいろんな反発の動きを見ていると、どこかで石破さんは辞意を表明せざるを得ない流れですよね。そうしないと総裁選の準備に入れないんですよ。
私あんまりこういう一般的に石破さんに電話して聞きましたなんて普段言わないんだけど、こういう話はそれ言わないと話が通じないんで言っちゃいますと、昨日も話したんですけども、やっぱりひと区切りっていうか、やることをやって責任を果たしてっていうイメージでしたね。
両院議員懇談会で「ひと区切りついたらやめる」ということを言うかどうかはまだわかりません。意外ともうちょっと遅くなる可能性もあります。
ーー総裁選の日程はどうなりそうでしょうか。
久江雅彦氏:
自民党総裁選は公示から投票まで12日ってのは一応書いてあるんですよ。その他但し書きもいろいろあるんだけれども、いずれにせよ過去を見ると大体2週間ぐらい。今回お盆休みがあるわけですから実際のところ、7月過ぎて8月だと実質3週間ぐらいしかなくて、しかも国会議員は予算委員会を除いて結構委員派遣の外遊が多いわけですよ。総裁選そのものはどんなに早くても8月の最後の週、私は多分9月にずれ込むと思うんですね。
トランプ関税妥結で「夏休みの難問を早々に片づけたようにみえるが…」
9月の下旬に国連総会があります。合わせて通例ですと外務防衛担当閣僚の日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2っていうのがあるんです。アメリカはGDP比で最終的に27年度で2%っていうことで、23年度から日本は始めているんですよ。ところが、コルビーというアメリカの政策担当の国防次官が防衛費をGDP比で3%と言い、中谷防衛大臣に対して本当は言いたいんだけども、その手前の事務方の局長級あるいは防衛審議官クラスの会合で、実はもう3.5%にして欲しいと言ってる。ただ日本は「オフィシャルな会談で言わないでくれ」ってずっと封印してるんですよ。それは参議院選挙があるからです。
ところがアメリカはもうしびれを切らして、「いやいや7月1日に2プラス2を開いて、そこで俺たち言うぞ」って言ったんですよ。だったらやめてくださいってなって2プラス2が流れたと。
ということで、もういい加減しびれをきらしたアメリカは何をしたかというと、イギリスのフィナンシャル・タイムズに「日本が2プラス2を蹴った。俺たちは3.5%を要求してるんだ」ってことをリークして、もう日本のメディアでも報じられてるわけ。これは非常に重要なことだから本来参院選でこういうのはね与野党で議論すべきだったんですよ。でもこれはみんな口をつぐんでいる。でもそれは9月の国連総会に連動する2プラス2で、アメリカはかなりの確率で私はオフィシャルに言ってくると思いますね。
ーー与党は参院選で惨敗したけども、そのときまでは今の体制でやってくれないと防衛費の問題っていうのは余計難しくなるとアメリカは思ったかもしれないですか。
久江雅彦氏:
そうですねこれは明示的なディールのカードじゃないですけれども、やっているルートは防衛とこの通商問題は違うんですが、少なくともトランプさんとこに集まってくる中で、これから日本は防衛力を強化していくというような話が、結果として大きな取引の中の1要素を占めると思うんですね。
ーー日本としては別問題だと言ってずっとやってきたわけですが、今回の“トランプ関税”で少し下がったからいいやと思っていてはいけないということですか。
久江雅彦氏:
別問題ではないし広く見たら、夏休みの難問(トランプ関税)を早々と片付けたように見えますけど、もっととんでもない宿題(防衛費問題)が今度きちゃうわけですよ。
これを総裁選含めてどういう政権ができるのかっていうことと、この防衛費の話っていうのは、一見別のようですけども、極めて密接にリンクしているので、そういう意味においては石破さんが8月中に辞めるのか9月の第1週ぐらいに総裁選が開かれるのか、この時期とこの2プラス2、あるいは今後の対米関係、実は非常に密接にリンクしてくるんですね。
・エアコン「1℃下げる」OR「風量を強にする」どっちが節電?「除湿」はいつ使う?賢いエアコンの使い方【ひるおび】
・スマホのバッテリーを長持ちさせるコツは?意外と知らない“スマホ充電の落とし穴”を専門家が解説【ひるおび】
・「パクされて自撮りを…」少年が初めて明かした「子どもキャンプの性被害」 審議進む日本版DBS “性暴力は許さない”姿勢や対策“見える化”し共有を【news23】