
「ミスタープロ野球」として親しまれた読売巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さんが3日、肺炎のため都内の病院で亡くなりました。89歳でした。
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巨人時代に長嶋監督のもとで活躍された、村田真一さん、元木大介さんに、長嶋さんの人柄を伺います。
原辰徳さん「私にとっては少年時代から憧れでした」
野球界からは、続々と追悼のコメントが寄せられています。
現役時代「ONコンビ」として、共に巨人の黄金時代を築いた王貞治さんは胸の内を語りました。
ソフトバンク 王貞治 球団会長(85)
「けさ連絡をもらいまして、“えっ”っていうのが最初の思いでした。入った時から長嶋さんは特別な存在でした、ジャイアンツの中ではね。はっきり言って不思議な存在でしたよね。不思議な魅力というか、そういったものがありましたね。“ありがとうございました”という言葉で全ては表せると思います」
2004年のアテネオリンピックで、病気で倒れた長嶋さんに代わり、監督代行を務めた巨人OBの中畑清さんは、目に涙を浮かべインタビューに応えました。
巨人OB 中畑清さん(71)
「嫌だって、だから俺は…こういうのは…。こんなことはあって欲しくないなっていうのが、もう受け入れることができません。人生だったからね、俺の中の。今からもずっと背中を追いかけていきたいっていうのは、俺の目標なので常に。死ぬまで。俺の方が先に死にたかったくらいですよ。悔しいです」
現役時代に長嶋さんから指導を受け、後を継いで監督に就任した巨人の前監督・原辰徳さんは…
巨人前監督 原辰徳さん(66)
「ビックリしたというのがありましたけれども。私にとってはもう少年時代から憧れでした。特に私は憧れのなかで、ジャイアンツに入り、選手、そしてコーチ、監督という立場でも深く影響を受け、一緒に居られたというのは、私の中でも大きな、燦然と輝くことであります。私にとっては神様みたいな存在でありました」
巨人OB生出演 “ミスター”の男っぽくて優しい人柄
井上貴博キャスター:
巨人時代に長嶋監督のもとで活躍されたお二人に、長嶋茂雄さんのお人柄について話を伺っていきたいと考えています。
村田真一さんは1981年にドラフト5位で巨人に入り、それから巨人一筋で“扇の要”である正捕手として活躍されました。2001年に行われた長嶋茂雄監督の勇退試合は、村田選手の引退試合でもありました。
やはりキャッチャーを務めていると、監督とのコミュニケーションは特に密にとると思います。さまざまな思い出があると思いますが、記憶に残っているエピソードを教えてください。
元読売ジャイアンツ 村田真一さん:
「ファンとメディアとしっかり付き合え」と、よく言われました。ファンの人を大事にしろ、メディアの人の取材に答えろと。そして、いつも監督は視聴率を気にしていました。
井上キャスター:
ちょうど93年にJリーグが開幕しました。そういうことも頭にあったのでしょうか。
元読売ジャイアンツ 村田さん:
僕には「村田、サッカーもいいけど、サッカーに負けちゃあかん」と言っていました。
あとは、97年の夏に私の父親が倒れ、余命1年と言われました。最後の阪神戦の前に「監督、すいません。うちの親父が病気になっちゃいました。親父が最後に監督と写真を撮りたいと言っているんですけど、だめですか?」って聞いたんです。
当然、監督は忙しいんですが、マネージャーに翌日のスケジュールを確認して、2本ぐらい入っていた取材を「そんなもん、ずらしてくれ!」と言って取材を飛ばしました。
それで父親が翌日、甲子園に来て10分くらいしたところで、監督に「取材もあると思うのに、ありがとうございます」とお礼を言ったら、「村田、決めるのは俺だ」と言って、20~30分ぐらい父親と喋り、写真も撮ってくれました。本当に喜んでいました。
翌年も「親父、大丈夫か?」と声をかけてくれて、一生の思い出です。そのとき父親が初めて「真一、ありがとう」と言ってくれました。
井上キャスター:
今のお話は選手と監督の域を超えた感じがします。
元読売ジャイアンツ 村田さん:
監督に父親の病気の話をしたとき、「村田、お前の親父は俺の家族と一緒だ、すぐ連れて来い」と言われましたね。
試合の3時間だけ厳しいですね。それ以外は本当に男っぽくて優しい方でした。
おしゃれでかっこいいイメージの裏で…「長嶋茂雄を演じるの大変なんだ」
井上キャスター:
元木さんがよく長嶋さんのことをグラウンドでは「鬼軍曹」っておっしゃいますが、我々はその長嶋さんを存じ上げません。どんなところが鬼なのでしょうか?
元読売ジャイアンツ 元木大介さん:
ベンチにいたら怒鳴っています。ミスや見逃し三振などに対して怒鳴っていました。「バットを振らないと勝負できない」と言って、見逃し三振を監督はすごく嫌っていたので。
昔、監督が立っているところにバットケースがあって、そこにチームのマスコットバットとかを入れていたんです。そのマスコットバットをバンバン振って、ベンチ裏のスタッフもそういうときは、監督の機嫌が悪いとわかったぐらいです。
井上キャスター:
東京ドームの全部のカメラ位置も、なんとなくわかっていると聞いたことがあります。
元読売ジャイアンツ 元木さん:
監督はもう全部わかってますね。何かあったときは、カメラに抜かれているのがわかっているので、絶対にあめをなめていたり、怒っていたりする姿を見せません。
ファンやテレビの向こう側の人たちにも、そういう意識が高いです。
出水麻衣キャスター:
長嶋茂雄像を、ご本人はどんなふうに描いていたと思いますか?
元読売ジャイアンツ 元木さん:
見てもらってわかると思いますが、まずスタイルが変わらない。現役の時から病気になるまで、服のサイズは一切変わってないです。
「長嶋茂雄」を本人が意識されていて、野球選手は現役引退したら太る人が多いですが、「そういう姿を見せたくない」と、常にかっこいいままです。
元読売ジャイアンツ 村田さん:
私もサウナのときに「村田はラクでいいな」「俺、長嶋茂雄を演じるの大変なんだ」と言っていました。本当におしゃれでかっこいいというイメージですね。
監督はおしゃれですよ。球場などに出入りするときに、車の後ろからピンク色のジャケットをパッとかけながら入ってくる。球場で誰も見てないんですよ、選手しかいないんです。そこでもやっぱり長嶋茂雄像を出すんですよ。
元読売ジャイアンツ 元木さん:
僕、買い物していたら、たまたまお会いしたことがあります。
長嶋さんは時計も必ず自分で店に行って、「これがいい」って2つぐらい並べて、ベルトも全部並べて、「この色にはこれ」と言って、お金も払わずそのまま持って帰るんです。
お店が家に請求して後で振り込むそうですが、お店の人も「めちゃくちゃかっこいい」と言ってました。長嶋さんは「ありがとう」って帰っていくらしいです。それぐらいおしゃれにもこだわってますね。
井上キャスター:
喜怒哀楽は激しい方だったんですか?
元読売ジャイアンツ 元木さん:
グラウンドのベンチに入って、勝負の午後6時になるとやっぱり目つきが変わります。
ただ、それ以外、サロンとかバックヤードでは本当に面白い人でした。
長嶋さん“都市伝説” 車の鍵がないと探していたが…
井上キャスター:
いろいろなエピソードがあります。
“都市伝説”と言われているようですが、試合前のバッティング練習後、「これから試合ですよ」と声をかけられて、「どうも変だと思ってたんだ。どうしてフロになんか入っちゃったんだろう?」と。どうやら試合の前にフロに入ってしまったようです。
元読売ジャイアンツ 元木さん:
ありそうですね。この“都市伝説”は初めて聞きましたが、ソックスを右に2枚履いて「1個ない」って大騒ぎしていたことがありました。僕らは一緒にプレーしていないので、僕らにとっても“伝説”です。
井上キャスター:
また、野球選手の皆さんは結構車で球場に入りますよね。長嶋さんが試合後のロッカールームで「車の鍵がない」といい、みんなで探したそうです。すると、「あっいけねぇ!きょう俺、車に乗ってこなかったんだ…」ということがあったそうです。
元読売ジャイアンツ 元木さん:
あるでしょうね。だって、息子の一茂さんを忘れて帰るぐらいですから。鍵なんてちっちゃいもんですよ。
聞いた話ですけど、当時子どもだった一茂さんを連れて試合に来ていたことを忘れて、試合後、球場において家に帰っちゃったそうです。奥さんに「一茂は?」と聞かれて「忘れてきた」と答えたという有名な話です。
井上キャスター:
ほんわかした雰囲気でお伝えできるというのも、本当に長島茂雄さんのお人柄ですね。
元読売ジャイアンツ 元木さん:
長嶋さんの周りや、長嶋さんがいると、全員笑顔になります。もう面白いし、楽しい。
元読売ジャイアンツ 村田さん:
周りにはいつも人がいるしね。スターだなって感じですよね。
本当に残念ですが、僕もお世話なったので、きょうは1日、長嶋茂雄さんのことを語りながら、家に帰って酒を飲みたいなと思っています。
皆さんも長嶋茂雄さんのことを思い出しながら語り合って、いっぱい飲んで欲しいと思っています。
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<プロフィール>
村田真一さん
元読売ジャイアンツ
1981年ドラフト5位で巨人入り 2001年退団
巨人一筋 正捕手として長年活躍
元木大介さん
元読売ジャイアンツ
1990年ドラフト1位で巨人入り 2005年退団
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