若者に届けたい“本物”のスカジャン「JacksonSquare Tokyo Shibuya」の挑戦「日本ってすごいなと再認識してほしい」
2025-06-09 15:42:07

高級レザーブランド「TOUR RECORD(トゥール レコード)」で注目を集めた株式会社BiS 代表取締役の伊禮門悟氏が、新たに立ち上げたのが桐箱入りの高級スカジャンブランド「Jackson Square(ジャクソン・スクエア)Tokyo Shibuya」。刺繍や縫製など、国内の職人による手仕事にこだわり、桐箱に収めて納品する独自のスタイルを採用している。このブランド立ち上げ背景には、技術の継承や本物の魅力を次の世代へ伝えたいという想いがあった。
――まず、スカジャンにフォーカスされた理由からお聞かせください。
伊禮門氏 僕たちの会社はスカジャンに限らず、日本の本物の職人さんたちを支援したいと思っています。でも、職人さんたちは、いいものは作れるけど売り方が分からない人が多い。だから、僕たちが見つけたいいものを高く買って、他の職人さんたちの付加価値も組み合わせてさらに高く売る。そうやって本物の技術に価値をつけていってるんです。これにより「日本を盛り上げる」という目的があるのですが、私が神奈川の人間なので、まず神奈川を盛り上げたいと思いました。少しやんちゃだった頃は、横須賀によく行ってたので、スカジャンにも憧れていたんです。青春の1つですね。
――製作工程にはかなりのこだわりがあるとか。
伊禮門氏 はい。刺繍はちゃんとした刺繍職人が手がけています。刺繍が終わったら、生地を切る職人にバトンタッチして、最後に形にする職人の手に渡る。3人の職人の技が合わさって、やっと1着完成します。

――それだけ手間をかけているから、普通のスカジャンとは全然違うと。
伊禮門氏 まったく違います。今のドブ板通りでは、本物を販売することが出来るお店がとても少なくなっていて、安い量産品が本物として売られていることが多くなってきています。遠目じゃわからなくても、触れば安物のジャンパーだってわかります。特に残念なのは、そういう安物を海外の観光客が本物だと思って購入し「日本ってこんなもんなんだ」と誤解されることです。ちゃんとした職人が作ったスカジャンは、ハンガーにかけたときのシルエット1つとっても違います。量産品は左右のバランスが崩れていたりして、ハンガーにきれいにかからないんです。でも、ちゃんと作られたスカジャンはシルエットも美しいですし、そういった細かいところまで職人の手が入っています。本物には本物をかけなきゃいけないということで、ハンガーも職人さんに作ってもらってるんですよ。
――すでに売れ行きも好調のようですね。
伊禮門氏 おかげさまで。スカジャンにもグレードがあって、マリリン・モンローがデザインされているスカジャンは、日本一と言われる刺繍の先生が手がけています。本来は、博物館にあるような1着なんですけど、特別に横須賀のドブ板通りから持ってきていただいて展示しています。販売している中で1番高い匠シリーズはシリアルナンバー入りで、入荷後2日で完売しちゃいました。うちの商品に既製品はなく、すべて刺繍職人が手がけたハイグレードなものだけです。それを職人さんが作った桐箱に入れて納品します。

――若い世代に届けたい想いがあると伺いました。
伊禮門氏 Z世代ですね。日本の若い子たちにこそ、本物に触れてほしい。本物がわかれば、日本のすごさを再認識できますし、それこそ「刺繍をやってみたい」と思う子が出てくるかもしれない。今は技術を継承できる人が本当にいないので。
――後継者不足は深刻なんですね。
伊禮門氏 この前行った工場では、おじいちゃんが1人で作業していて「もう作れる人がいないから、これで終わっちゃうのかな」と言ってました。実際、刺繍に使う糸ひとつ取っても、かつてはものすごく細い糸を作れる職人さんがいたんですが、その方は技術を継承する前に亡くなってしまったんです。その方が作っていた糸は、今の糸よりも品質がよくて、60年前のスカジャンにはそういった糸が使われていました。もう二度と同じものが作れないと思うと、本当に残念です。そうやっていいものが少しずつこの世から失われていく。だからこそ、今残っている職人さんの技術を、しっかり次世代に繋げていかないといけないんです。
――いいものを広めることで状況を変えていきたいと。
伊禮門氏 そうですね。僕たちはPR会社として、ずっと日本のいいものを宣伝してきました。業界にこだわらず、いいものといいものを組み合わせてより良いものを作り、しっかりブランディングしていきたいと思ってます。
――ブランドとしての今後の展望は?
伊禮門氏 最終的には、日本の職人技が集まるブランドを表参道に出したいです。職人さんたちにも「僕たちの商品も並べてもらえるんですか?」って期待してもらっていて、すごくうれしいです。

――しかし、職人さんとの関係性づくりは難しそうです。
伊禮門氏 めちゃくちゃ難しいです(笑)。変な売り方をされたくないからって、最初は卸すのも断られました。実際に「下品な売り方しやがって」と面と向かって言われたこともあります。自分がその職人さんの考えをキャッチできていなかったことが原因でしたが、きちんと話し合って理解してもらえたことで、かえって距離が縮まりましたね。職人さんとの関係って、結局は信用なんです。
――最後に、ブランドを通して伝えたいことを教えてください。
伊禮門氏 これまでおよそ30カ国ほど世界を旅してきたんですけど、日本ってすごく目線が高い国だなと感じました。トイレはきれいだし、水もそのまま飲める。それが当たり前になっていますが、実は全部誰かの努力の積み重ねなんですよね。だからこそ、日本で育った若者たちにも、その価値に気づいて、日本をもっと好きになってほしいんです。そのためにも本物に触れてほしい。それが、未来の担い手を育てるきっかけになると信じています。
情報提供元: マガジンサミット