イスラエルが核関連施設や軍事施設などイラン各地の数十か所を空爆しました。いったいなぜこのタイミングなのでしょうか。記者が解説します。
【写真で見る】未明に突然の閃光…イランの核関連施設などに空爆も
イラン革命防衛隊の総司令官や核科学者ら複数人死亡の情報も
高柳光希キャスター:
中東情勢が一気に緊迫しています。
イスラエルがイラン中部の核関連施設や各地の軍事施設を攻撃しました。首都テヘランでは一般市民の死者も出ています。
さらに、イラン革命防衛隊のサラミ総司令官や元原子力庁長官で核科学者のアバシ氏ら数人が死亡したという情報もあります。
今回の事態の大きさをどのように分析していますか。
元JNN中東支局長 秌場聖治記者:
イランにとって核開発は絶対に譲れない権利で「国是」のようなものです。
その中心に攻撃が行われたというのは、これまでと比べて一段レベルが上がった感があって、予断を許さない状況になっていると思います。
高柳キャスター:
両国の対立が始まったのは、1979年のイラン革命です。以降、基本的に敵対関係にあります。
イランの核兵器の開発をめぐり、最高指導者ハメネイ師は「平和利用であり権利、なぜ許されないのか」としています。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は、「イランの核兵器開発は、我々イスラエルを地上から消すためだ」としています。
12日にIAEAがイラン非難の決議採択 イラン「新たなウラン濃縮施設を稼働させる」
高柳キャスター:
今回も、イランの核兵器開発への先制攻撃と位置付けているようですが、なぜこのタイミングでの攻撃になったのでしょうか。
元JNN中東支局長 秌場記者:
一つの大きな背景として、現在、アメリカのトランプ政権とイランは核開発をめぐって、アメリカとしては、核開発を抑えるための交渉を数か月行ってきました。ただ、若干行き詰まりを見せていたところです。
12日、IAEAが調査に協力しないということで、イランを非難する決議を採択しました。
これにイランは対抗して、「新たなウラン濃縮施設を稼働させる」というリアクションをしたため、イスラエルにとっては攻撃に踏み切る口実として利用できたと言えるかもしれません。
さらにもう少し広く考えると、最近、中東でイランの影響力が縮小してきたことが挙げられます。
イランが支援してきたレバノンの「ヒズボラ」では絶対的な指導者が殺され弱体化。パレスチナでは「ハマス」が弱体化、シリアの「アサド政権」も崩壊に至っています。
これらによる、中東でのイランの影響力縮小はイスラエルにとってはチャンスだと言えたと思います。
日比麻音子キャスター:
イスラエルはイラン最大の施設へ攻撃をし、ネタニヤフ首相も主要な核科学者を標的にしたと声明を出しています。
そういった面では“精神的な攻撃”でもあったと見ていいのでしょうか。
元JNN中東支局長 秌場記者:
そうですね。イランは核開発を国の誇り、中心にやってきたということが一つあります。
すぐにでも核兵器を持つのではないかと指摘していたイスラエルからすると「自分たちの身が危ないのでやっているのだ」というのが主張です。
核科学者の暗殺は過去にもありましたが、イランから見ると革命防衛隊という非常にパワフルな組織のトップが殺されていて、いつどこにいるかもわかった上で攻撃されているので、屈辱やダメージはかなり大きいと思います。
イランのハメネイ師「厳しい報復を受けることになる」ドローン100機を発射か
高柳キャスター:
今後はどのように動いていくのでしょうか。気になるのが、イランの報復攻撃です。
2024年から今年にかけて両国は攻撃の応酬を繰り返してきました。2024年4月1日、イスラエルがシリアのイラン大使館を攻撃し、革命防衛隊司令官らが死亡しました。
12日後の4月13日、イランがイスラエルに反撃をします。初の直接攻撃で、弾道ミサイルなど300発以上が発射されたと発表されました。
6日後の19日には、イスラエルが再びイランに反撃をします。イラン中部の軍事施設で爆発音がして、防空システムが作動。「3機のドローンを撃墜した」とイランは発表しています。
このように、イランは「やられたらやり返す」の姿勢を貫いてきました。ハメネイ師は「イスラエルは血に染まった手で犯罪を犯し、邪悪な本性を露呈した。厳しい報復を受けることになる」としています。
イスラエル軍からの最新情報では、イランがドローン100機をイスラエルに対して発射し、迎撃中であるとしています。
元JNN中東支局長 秌場聖治記者:
100機のドローンは序の口レベルで、本格的な攻撃ではないと思われます。
2024年4月も、お互いエスカレートしないように手加減していました。イランもイスラエルの攻撃があったことは認めていますが「これは大したことではなかった」と言って打ち止めています。
今回は、核施設がどれだけやられたかが一つのポイントとなってきます。
イスラエルは「まだ攻撃を続ける」と言っているので、実際にどれだけのダメージが出たかによって、イランの反撃の規模に関係すると言えると思います。
南波雅俊キャスター:
2000年代から核をめぐって、両国は争いなどがずっとあって、間接的に「イスラエルとハマス」「イスラエルとヒズボラ」で戦ってきて、直接的な戦争にはなっていません。今回の攻撃を経て、今後、どれくらい激化していく可能性があるのでしょうか。
元JNN中東支局長 秌場記者:
おそらくイラン側も「イスラエルから核関連施設が攻撃されるだろう」と織り込み済みで、いろんな防護策を講じてきたと思います。
それが今回、どれくらい攻撃を受けたのか次第かと思うのですが、これまでより一段上がったレベルでのやり合いがあると考えた方がいいと思います。
ルビオ国務長官「我々は関与しておらず」 15日にイランと核関連協議へ
高柳キャスター:
緊迫する中東情勢をどう沈静化すればいいのでしょうか。気になるのは、イスラエルを支援する立場を貫いてきたアメリカの存在です。
今回のイランへの攻撃について、ルビオ国務長官はホワイトハウス公式Xで「我々はイラン攻撃に関与しておらず、現地の米軍を守ることを最優先にしている」と投稿しました。
その一方で、15日にアメリカとイランの核関連協議を予定しているということです。
元JNN中東支局長 秌場記者:
トランプ政権としては「交渉しているから、その間はやめとけ」というのがシグナルでした。
それを今回、イスラエルが振り切って、イランに攻撃を行ったということで、アメリカは今回関与していないと、かなり鮮明にしてます。
なので、イランが次に反撃するとき、アメリカの関連施設を標的にするかどうかは、一つのポイントだと思います。イスラエルはアメリカを引きずり込みたいということもあると思います。
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<プロフィール>
秌場聖治
元JNN中東支局長
シリア内戦など中東各地を取材
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