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トランプ政権の“知”に対する圧力でアメリカからの“頭脳流出”に現実味 背景に「エリート・知識人への不信感」【風をよむ・サンデーモーニング】

海外
2025-04-27 17:15

いま、アメリカを代表する名門大学とトランプ政権が対決姿勢を強めています。背景にはいったい何があるのでしょうか。


【写真で見る】「アメリカを去ることを検討している」と答えた研究者は75%


トランプ大統領「ハーバード大学は恥ずべき存在」政権の圧力に揺れる学生たち

大学教授協会の会員
「高等教育が攻撃を受けている。私たちはどうすればいいんだ?」
「立ち上がって反撃しよう」


4月17日、ニューヨークの広場に集まったのは大勢の学生や教授ら。いま、全米各地の大学がトランプ政権の圧力に揺れています。


とりわけ、その矢面に立たされているのが名門・ハーバード大学です。助成金の凍結を通告され、抗議の提訴を行ったのです。


ハーバード大学の学生
「これは学問の自由に対する攻撃で、民主主義に対する脅威だ」


イスラエルによる“ガザ攻撃”を巡って続く、学生らの抗議デモ。これをトランプ政権は「反ユダヤ主義」として問題視し、取り締まりの強化を要求しました。


さらに入試についても、近年続く“多様性重視”の選考を止めるよう求めたのです。


これに対し、ハーバード大学は要求を拒否。この対応をバラク・オバマ元大統領は、SNSで「他の高等教育機関にとっての手本」と賞賛します。


しかし政権側は、約23億ドル(約3300億円)の助成金などを凍結すると発表。


ドナルド・トランプ大統領(17日)
「ハーバード大学は恥ずべき存在だ。彼らのやったことは恥だ」


「強制送還されるかもしれない…」留学生からは懸念の声

さらに、デモに参加した学生に対する圧力も強めており、留学生からは懸念の声が上がっています。


ハーバード大学 スウェーデンからの留学生
「ハーバード大学に通っているだけで強制送還されるかもしれない。恐ろしい状況です」


トランプ政権は、ハーバード大学が要求に応じなければ、留学生の受け入れ資格を剥奪するとまで警告しています。


こうした強権的姿勢の背景にあるのは何か。トランプ氏は、就任演説でこう語っていました。


トランプ大統領(1月20日)
「長年にわたり急進的で腐敗した既得権益層は、市民から権力と富を搾取してきたんだ」


「トランプ氏の支持者は、こうした“既得権益”を享受してきたのが大学や研究機関などのエリートだと考えている」と専門家は言います。


慶応大学・渡辺靖 教授(現代アメリカ論)
「トランプ支持層の中には、大学とか科学機関というのは、概ねリベラルの牙城だと理解されていて、自分たちにとっての抵抗勢力であると捉えられている」


実際、いまやトランプ政権の強権的姿勢は、研究機関にも及んでいます。

その結果、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」が3月に行った研究者への調査で、75%(1200人)がアメリカを去ることを検討していると答えたのです。


そして“頭脳流出”へ…“不信感”の渦が破壊する“牽引役”としてのアメリカ

大学同様、トランプ政権による研究機関への圧力は強まっています。


たとえば、NASA(アメリカ航空宇宙局)に対しては、研究予算をおよそ半減すると提示。(ワシントン・ポスト11日)


また、気象情報の提供や海洋調査などを行うNOAA(アメリカ海洋大気庁)に対しては、2025年、職員の約20%の削減が計画されています。(ロイター3月9日)


NOAAで解雇通告を受けたデビッド・ディ・ディハーンさん
「この仕事(NOAA)に2024年10月に就きましたが、残念ながら5か月後に解雇されたんです」


マグロなどの研究に携わってきたディハーンさんは、突然メールが届き、90分以内に職場を去れと通告されました。今後、ヨーロッパで働くことを考えているといいます。


ディハーンさん
「私の仕事は専門的なもので、科学や海洋研究に情熱があるからやっています。海外に移住します。研究のチャンスがあるなら、どこにでも行くつもりです」


ヨーロッパ各国は、こうした研究者の受け入れに積極的と報じられており、アメリカからの“頭脳流出”も現実味を帯びています。


にもかかわらず、圧力が弱まる気配がないのはなぜか。渡辺教授は、トランプ支持層の期待が背景にあるといいます。


慶応大学・渡辺靖 教授(現代アメリカ論)
「これまでエリートとか知識人の言うことを聞いてきた結果、自分たちの生活がこんなにも惨めになったという不信感がうごめいていて、ましてや大学を出ていない人たちからすると、より強力な壊し屋を救世主として、トランプ支持がより鮮明になる」


実際、2022年のアメリカの国勢調査によれば、25歳以上の6割強が大卒ではなく、2024年の大統領選の出口調査では、そうした人の半数以上がトランプ氏に投票しています。


渡辺教授はこうしたトランプ政権の姿勢は、第二次大戦後、アメリカの繁栄を支えた力の源泉を失わせるだけでなく、国際社会全体に大きな影響を及ぼすと懸念します。


渡辺教授
「とにかく力任せで自分たちに従わない者は弾圧していく。言論統制、思想統制につながっていきかねない。ますますソフトパワーも低減していく。

第二次世界大戦というのは、その反省をもとに、自由で開かれた社会、法に基づいた秩序が必要だということでアメリカが牽引してきた。国際秩序の根底が大きく揺らぐ、非常に危険な状況にある」


アメリカを支えてきた“知”に対する圧力。それは、この国をどこへ導くのでしょうか。


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