椅子に座るアメリカのトランプ大統領と、その横に立つ赤沢経済再生担当大臣。2人とも満面の笑みを見せています。トランプ氏が直々に乗り出してきた異例の交渉。自らを“格下”と謙遜してみせた赤沢大臣ですが、物申すことはできたのでしょうか。
【画像でみる】「日本が最優先」トランプ氏出席 どんな交渉が?
トランプ氏「日本との協議は最優先だ」 ホワイトハウスで約50分間行われる
赤沢大臣は、ひと仕事終えて、安堵したような表情をみせました。
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「ちょっと何かお茶かなんか...」
お茶を飲んで、一息ついてから話を始めました。
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「トランプ大統領が私に会ってくださったことは大変ありがたいこと。(私は)格下も格下ですので。出てきて直接、話をしてくださったことは本当に感謝している」
自らを“格下”と謙遜し、トランプ大統領を持ち上げてみせました。
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「本当に温かい配慮の方で、格下と会っているということを本当に感じさせない。本当に大統領の器の大きさというか、温かさというか、配慮は非常に強く感じた」
日米の関税交渉は、ホワイトハウスで約50分間行われ、アメリカ側からは、ベッセント財務長官やラトニック商務長官、グリア通商代表らが同席。トランプ大統領は、「日本との協議は最優先だ」と発言したということです。
その後、トランプ大統領が参加しない閣僚級の協議が行われました。
今回の交渉で赤沢大臣は、アメリカ側に「相互関税」や自動車関税などについて「極めて遺憾だ」と伝え、見直しを強く要求。
日米両政府は、可能な限り早期に合意し首脳間での発表を目指すことや、次回の協議を4月中に実施すべく日程調整することに。
閣僚レベルに加え事務レベルの交渉も継続することで合意したということです。
Q.為替や案戦保障に関する話も出たか?
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「この言い方をすると、ちょっとわかっちゃうところもあるが、為替については出ませんでした、以上です」
在日アメリカ軍の駐留経費の負担など、安全保障に議論が及んだことを示唆しました。
一方、トランプ大統領はSNSで、「貿易に関する日本の代表団と会談できたことを大変光栄に思う。大きな進展だ!」と投稿している。
外務省幹部「想定外のことは出なかった」 これから交渉を控える国々はどう見た?
今回の交渉を受けて石破総理は「今後とも容易な協議とはならないが、トランプ大統領は、日本との協議を最優先としたい、このように述べている。今回、次につながる協議が行われたと評価をいたしているところ」と話しました。
今後は「最も適切な時期にアメリカを訪問し、トランプ大統領と直接会談することを考えている」と、必要に応じて自ら交渉に乗り出す考えを示しました。
日本政府内ではトランプ大統領が出席することで、「何を言ってくるかわからない」と警戒感が高まっていましたが...
外務省幹部からは「想定外のことは出なかったね」、政権幹部からも「トランプ大統領はかなり礼儀正しくやってくれた」という声が上がっていました。
一方、野党側は、こう注文をつけました。
立憲民主党 大串博志代表代行
「『(赤沢大臣が)格下の自分に対して、トランプ大統領が出てきてくれて本当にありがたかった』とか、ややへりくだるような態度での交渉状況が見て取れました。毅然とした態度で交渉に臨んでほしい」
株価は、警戒感がやや和らぎ幅広い銘柄が買われました。
アメリカとの交渉について街の人からは「少しでも日本の交渉団がうまくやってくれればいいな」「日本は相手が大統領であろうが大臣だろうが関係なく、日本の言いたいことを言えばいい」という意見が聞かれました。
これからアメリカとの交渉を控える国々は、日米の関税交渉をどのように見たのでしょうか。
来週にも交渉を予定している韓国。聯合ニュースでは「似たような状況が再現される可能性があるという観測が少なくない」と予想しており、ほかの韓国メディアでも「日米交渉の主要議題は韓・米の懸案と似ている」「(日米交渉は)参考資料になる」などと報じています。
トランプ氏が突然出席の理由は“特別扱い”?
小川彩佳キャスター:
突如、トランプ大統領の参加という異例の形で行われることになりました。なぜトランプ大統領自らが交渉の場に着いたのか。その狙いについて、実際に交渉が行われたことで何か見えてきたことがありますか。
ワシントン支局 涌井文晶 記者:
先週、発動直後の相互関税の一部を一時停止に追い込まれるなど、トランプ関税を巡ってはこのところマイナスのニュースが目立っていました。それを払拭したい、関税は良いものだということをアピールする良い材料を、できるだけ早く得たいということで、トランプ大統領自らが出てきたということではないかと考えています。
トランプ政権は、90日間で75か国と交渉をまとめるという腹づもりですが、通常、通商交渉というのは1か国とやっても年単位で時間がかかるものです。時間がありません。
そうした中で、日本は対抗関税など、アメリカに対する対決姿勢をとっていないという国です。交渉をまとめやすい相手と見て、トランプ大統領自らが交渉に参加して、ある種、特別扱いをして見せたということではないかというふうに見ています。
藤森祥平キャスター:
トランプ大統領は自分のアピールを気にしていますけれども、今回、なぜ交渉の場にカメラを入れなかったんですか。
ワシントン支局 涌井文晶 記者:
なかなかはっきりした事がわかっておりません。首脳以外との会談ではカメラを入れないというホワイトハウスの慣例もあるようです。
なので、それに従ったという見方もありますが、トランプ大統領としましては、あくまで貿易戦争の本丸は中国です。
SNSに「日本との会談は生産的だった」とアピールした上で、中国からの接触に期待する投稿をしていました。
日本を始め、中国以外との国の交渉はできるだけ早期にまとめたいという中で、テレビカメラを意識したパフォーマンスをする余裕がないという状況だったのではないかというふうに考えます。
斎藤幸平さん「“属国精神”丸出しで国益は守れるの?」
藤森キャスター:
これまでの動きを見てみますと、日本はトランプ大統領にとって与しやすい相手で、かなりうまくやりこめられてしまうのではないかなという見方がありますけど、いかがですか。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
やりやすいどころか、これだとトランプ大統領にとってはカモネギ状態です。安倍元総理のときから、そういう扱いをしているような節があるわけですけれども、そういう状態の中で、今回、赤沢大臣が自らを「格下」と言ってしまったら、“属国精神”丸出しで、本当に国益を守れるのかと少し心配になりました。
小川キャスター:
格下と自らを卑下するような言葉には批判の声もあります。赤沢大臣は会談前から「大丈夫か」という声がありましたが、どう見ていましたか。
株式会社Quizknock CEO 伊沢拓司さん:
トランプ大統領が突然、どのような経緯で出てきたのかわからないのですが、日本が大臣を出した上で、アメリカからは急遽、大統領が出てくる。しかも、開催場所はアメリカです。
日本は、緊急対応できない状況に追い込まれたのはしんどかったでしょう。また、なぜそうなったのかを日本は考えたと思うので、赤沢大臣の心境を慮ってしまいます。
僕は、「格下」とは自分について言っているのかなという印象を受けました。自身の立場を考えると、大統領よりは格下なわけですから、大統領が出てきているのに、外交のマナーとしては1回、触れておくべきだなと思ったのでしょう。
器の大きさについての発言はちょっとわからないですけれども、後から「我々(アメリカ)は大統領が出てきたのに、日本は(総理を出さないのは)失礼だ」と言われるリスクも考えたとは思います。
少なくとも今回のケースに関しては、これを1つ取って、「少しへりくだりすぎでは」というのは、なかなか難しいのでは。むしろ、アメリカ側の戦略に乗らなかったという考え方もできるのかなと個人的には思いました。
藤森キャスター:
関税交渉は始まったばかり。大事なのはこれからなので、今回のことだけで結論付けは難しいですよね。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
もし次回、石破総理が行くのであれば、対等なパートナーなので、ウクライナのゼレンスキー大統領のように、圧に負けない断固とした姿勢を示して欲しいです。
ウクライナの情勢を見ればわかりますが、屈しなくとも、トランプ大統領は好き勝手にはできないです。そういう流れの中で心配しているのは、駐留米軍費用の関係の問題であるとか、特に貿易赤字を解消するための防衛費。アメリカから武器をもっと買うとか、そういうわけのわからないことにならないように注意したいと思います。
小川キャスター:
今後、各国の交渉も行われます。その進捗を見つつというところで、次回の交渉は4月中に行うべく調整中だということです。
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<プロフィール>
斎藤幸平 さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
ドイツ在住 著書『人新世の「資本論」』
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中
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