
超人たちが34年ぶりに東京へ!今年9月に開幕する「東京2025世界陸上」を前に、これまで歴史に名を刻んだ伝説のアスリートたちを紹介する。
【一覧】9月13日開幕『東京2025世界陸上』日程&出場選手
世界陸上イエテボリ大会では日本女子トラック種目初の8位入賞を果たし、10000mの日本記録を更新した鈴木博美は、マラソン転向後も自他共に認めるほど練習嫌いだった。しかし世界陸上アテネ大会(1997年)への強い思いが、中長距離の名指導者・小出義雄氏のノウハウと鈴木の強靱なメンタルによる密度の濃い練習に繋がった。迎えた世界陸上アテネ大会、優勝候補筆頭のファツマ・ロバ(当時23、エチオピア)が途中棄権するほどの過酷な条件の中、鈴木は笑顔で独走し、完全優勝を成し遂げた。
灼熱のアテネ、日本勢と優勝候補・ロバの戦い
マラソン発祥の地、ギリシャ・アテネ近郊のマラトン村を75人の女性ランナーが一斉にスタートした。日本からは鈴木(当時28)のほかに、飛瀬貴子(当時23)、藤村信子(当時31)、原万里子(当時26)、前回大会で銅メダルを獲得した安部友恵(当時25)の5人の選手が出場した。
日本人選手の大きなライバルであり、優勝候補の最有力と目されていたのが、ファツマ・ロバだった。ロバは前年の1996年アトランタ五輪でほとんど注目されていなかったにも関わらず、衝撃的な独走で金メダルを獲得していた。さらに前回大会金メダリストのマヌエラ・マチャド(当時34、ポルトガル)、後に2001年の世界陸上で金メダルを手にするリディア・シモン(当時23、ルーマニア)といった世界の強豪もこのレースに挑んでいた。
衝撃の展開!優勝候補のロバがまさかの棄権…
レース序盤、日本勢は積極的な走りで上位をキープし、11km付近で遅れ始めた安部以外の日本人選手4人は、20kmを過ぎても先頭集団に食らいついていた。鈴木はレース前、解説の増田明美氏に対し「死んでもいいからついていく」と強い覚悟を語っていたという。
そしてレースが20.9km地点に差しかかった時、実況アナウンサーが驚きの声を上げた。
実況:あっ、1人やめました。やめたのは…ロバだ!
解説の増田氏、そしてゲスト解説の有森裕子氏も「えっ!」と思わず声を上げる驚愕の展開になった。優勝候補のロバが突然走るのをやめ、左脇腹に手を当てて歩き出したのだ。原因はアテネの暑さによる体調不良だった。23km過ぎにはシモンが走りながら嘔吐するなど、選手たちにとって過酷な条件下でのレースだった。
笑顔の独走、そして歓喜のゴール
優勝候補のロバが途中棄権し、混戦模様となった先頭集団は鈴木、マチャド、シモン、飛瀬、原ら7人に絞られ、鈴木は27.5㎞付近の給水所を過ぎたあたりから、一気に後続を突き放し、トップに躍り出た。沿道からは大きな拍手や声援が送られ、その声援に応えるかのように、軽やかに独走する鈴木の表情は笑顔に満ちていた。その後も笑顔で力強く走り続け、にっこりと両手を広げ2時間29分48秒でゴールテープを切った。この瞬間、鈴木は同大会で日本勢最初で唯一の金メダルを獲得した。また飛瀬も2時間32分18秒で4位に入賞する健闘をみせた。
笑顔の理由はまさかの…
レース後のインタビューで鈴木は笑顔の理由について意外なエピソードを語った。
「(レース中)今井美樹さんの“PRIDE”という歌が頭の中をぐるぐる回っていた」
「ふと気がついて、自分でも余裕があるのかなと」
また、現地の人が日本語で応援してくれたことがとても嬉しかったとも語った。日本女子マラソン界にとって浅利純子に続く2人目の世界陸上金メダルという歴史的な快挙だった。
東京2025世界陸上 女子マラソン「この選手に注目!」
【日本人選手】
◆安藤友香(31、しまむら)2時間21分18秒
東京五輪、2017世界陸上、2025世界陸上代表
◆佐藤早也伽(31、積水化学)2時間20分59秒
2023世界陸上、2025世界陸上代表
◆小林香菜(24、大塚製薬工場)2時間21分19秒
2025世界陸上代表
【外国人選手】
◆シファン・ハッサン(32、オランダ)2時間13分44秒
パリ五輪・金
◆ルース・チェプンゲティッチ(30、ケニア)2時間9分56秒
2019年世界陸上ドーハ・金、24年シカゴマラソンで世界新
※日本代表は選考レース終了
※東京世界陸上への出場は未確定
※名前の後ろは自己ベスト
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