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トランプ政権×ハーバード大 対立激化、狙われた留学生 トランプ大統領の思惑は?【Nスタ解説】

海外
2025-06-04 21:02

先週、アメリカ・ハーバード大学で行われた卒業式。卒業生たちが被っていた帽子には「留学生を守れ」の文字が。トランプ政権と対立が深まるハーバード大学。そして、抑圧される留学生の今を取材しました。


【写真を見る】ハーバード大学を名指しして批判するトランプ大統領


トランプ政権×ハーバード大 対立激化

高柳光希キャスター:
トランプ政権とハーバード大学の対立について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。


事の発端は2023年の10月、イスラエルによるガザの侵攻が始まりました。それに伴い、全米の大学でデモが広がります。そこでトランプ大統領は「大学が反ユダヤ主義を助長している」と批判しました。


標的となったのは、名門ハーバード大学です。トランプ政権は22億ドル、日本円で3100億円以上という助成金を盾に、今年の3月〜4月にかけて、デモに参加した学生の取り締まり強化などを求めました。


しかし、ハーバード大学はそれを拒否したため、標的はハーバード大学の学生たちへと変わります。トランプ大統領は留学生の受け入れ資格停止を求めましたが、ハーバード大学は訴えを起こし、裁判所が一時差し止めを行っています。


要求はどんどんエスカレートしていき、先週、学生ビザ取得のための面接の新規予約を停止しました。これにより、全てのアメリカ留学希望者に影響が出てきました。


つまり、「トランプ政権」対「留学生個人」という非常にアンバランスな構図になっているわけです。トランプ大統領なぜこうした行動に出のでしょうか?


TBS報道局外信部ニューヨーク支局員 窪小谷菜月 記者:
トランプ大統領は、自身が反ユダヤ主義にしっかり向き合っているんだと支持者にアピールする狙いがあります。


そもそもアメリカ社会は豊富な資金力を持つユダヤ系の団体が非常に大きな影響力を持っており、政権に関わらず伝統的にイスラエル寄りの立場をとっていました。トランプ大統領も前政権のときから一貫してイスラエル寄りの政策をとっており、今回の措置もその一環と言えます。


また、トランプ政権が根底に持っている「反エリート主義」も背景の1つと言われています。トランプ大統領は、エリート大学の教育によって多様性の重視を掲げる人、つまり自分の方針とは相反する人が生まれていると大学を非常に敵視しています。


エリート大学には経済的に恵まれている家庭出身の人が多いことから、トランプ大統領の支持層である労働者階級の人の中には、入学の機会が平等でないのではないかといった大学に対しての不満や嫉妬を持っている人が多くいます。


いずれにせよ、支持層に対する自分自身の政策のアピールのために、立場の弱い留学生を狙っているということで現地メディアも批判しています。


井上貴博キャスター:
ある意味、トランプ大統領の政策は一貫しているなと感じる部分があります。反エリート主義に加え、国内の経済格差は移民流入とグローバル主義で起こったのだというロジックでトランプ大統領は捉えている。


今回のケースはまさにそれで、労働者の票が欲しいからこのようなことをやるのですが、結果的に損するのはアメリカなのではないかという気はします。


実業家・インフルエンサー 岸谷蘭丸さん:
トランプ政権の支持基盤は労働者階級だと言われているので、そこに対するアピールは欠かさないんだろうなということもありつつ、個人的に思うのは、まず留学生にとっては本当に大変なことであるのは明らか。私の会社も留学支援や海外大学の受験を考える人がメインなので「今アメリカはやめとこうかな」という人が相当多い。


アメリカにいる知り合いや留学中の友達も沢山いるのですが、帰ってこられなくなるという事態が発生している。要は帰ってきてしまうと再入国ができなくなる恐れがあるんです。ハーバード大学などが代表とされる名門大学の集まりである「アイビーリーグ」というものがあるのですが、そこは特に厳戒態勢です。例えば「インターンが日本で決まっていたけど夏休みに帰れなくなってしまった」とか「旅行に行けなくなってしまった」とか「帰れないから家を探さないといけない」など、結構シビアな問題が留学生には起きていると最近よく見かけます。


狙われた留学生 トランプ大統領の思惑は?

高柳キャスター:
ここ数か月で話題になっているこの問題ですが、実際にハーバード大学に留学をして卒業した当事者である向井さんによると、トランプ大統領が留学生を敵に回すというのは今に始まった話ではないということです。


Nスタディレクター 向井彩野さん:
トランプ大統領が留学生のビザを剥奪したのは実は今回が2回目です。ちょうど私が在学中だった2020年のコロナ禍、トランプ大統領はコロナに対して「99%無害だ」というかなり強いスタンスをとっていました。それに対して多くの全米の大学は、コロナウイルスを脅威と捉え、蔓延防止のために新学期の全ての授業をオンラインで行うといった立場をとっていました。


ただ、このスタンスの違いが自分にとって不都合なトランプ大統領は、大学側に揺さぶりをかけるために、弱者である留学生に対して攻撃をしました。授業が全部オンラインならアメリカにいる必要はないということで、留学生の「ビザ剥奪」を発表します。


私は当時、大学にいましたが、中にいる学生も出て行かなくてはいけない、一旦外にいる学生も戻ってこられないといったことで、キャンパスは大混乱でした。全米各地で裁判に持ち込まれたことでビザの剥奪はなかったのですが、多くの大学でこのときの記憶は今も鮮明に残っています。


実際にトランプ大統領が選挙期間中も移民に対して強硬的な姿勢をとっていたことから、第2次政権が始まっても、また同じことが起きるのではないか、留学生のビザが剥奪されるのではないかという不安が広がりました。それが今年の1月、トランプ大統領の就任の時期です。


今この話題は大きくなっていますが、実は学生の不安は1月から始まっていました。実際、ハーバード大学ではトランプ大統領就任前、冬休み中ということで多くの留学生が一時帰国していた12月に、入国拒否されないよう「就任前になるべく早くアメリカに戻るべき」といったアドバイスも行われていました。その後も留学生向けに「米国外への渡航を控える」「滞在証明を常に携帯」といったアドバイスは継続的に行われていました。


これだけでも正直、居心地の悪い大学生活だと思うのですが、私が取材した学生はさらにSNSの過去の投稿や履歴を全部遡り、アメリカに対して批判的な内容を全て削除したり、アプリそのものを削除している人もいました。


また、アメリカとの関係性が比較的良好ではない中東地域の一部の学生は、強制送還される不安から授業を全てオンラインで受けるといった苦しい状況が1月から続いていました。


井上キャスター:
今はこうなっていますが、向井さんがいたときはどのくらいの感覚でしたか?


向井さん:
バイデン大統領のときは何の心配もなく自由にデモに参加して、自由に登校していました。私のルームメイトはパレスチナ出身の留学生だったので、もし今大学にいたら、その友人のためにデモに参加していていただろうと思うと他人事ではありません。


実際に私が取材した留学生は「厳しい言論統制で何も話せない」と言っていました。この言論統制という重い言葉を若い学生から聞くことが何よりショックでした。しかし、学生たちは世界中でこのテーマについて報道が行われていることを励みに感じているようです。


遠い日本にいる私たちには何もできないように感じてしまうかもしれませんが、こうした彼らの辛い状況に少しでも思いを馳せることが、励みになるのかなと思います。皆さんにもぜひ気にしていただけるとありがたいです。


抗議デモ参加の学生、顔と名前を出すことに抵抗感

実業家・インフルエンサー 岸谷蘭丸さん:
個人的にはトランプが絶対に悪いという見方も少し違うんじゃないかなと思っています。彼が何をしようとしてるのかを理解する努力を僕たちもしなくてはいけない。例えば、ハーバード大学には中国人留学生がものすごい来ている。そこに中国との大きいパイプがあって、資金的にも助けられている部分がある。


一方で、国家安全保障の観点、技術が流出してしまうという観点だったりと、二国間の関係性を思うと、警戒している国としてやっぱり問題だよねというふうに思っている節はある。


というところで今回、ホワイトハウスがダイレクトにアプローチできたのが、補助金をなくすことや、ビザを取り消すこと、つまり彼も彼なりのある程度のイデオロギーに従ってやっていることであって、もちろん留学生自体もすごくかわいそうなんだけれども、何をしようとしていて、どういう理由でこうなっていて、我々はこれをどう見るべきなのかを、すごくフラットに見た方がいいんじゃないかなとすごく思っております。


高柳キャスター:
実際に現地を取材している窪小谷さんはどういった印象を持ちましたか。


窪小谷菜月 記者:
ハーバード大学では卒業式の前に政権に対する抗議デモが行われましたが、顔と名前を出して自分の発言をした留学生は1人だけでした。


2024年のデモを含めて1年ほどアメリカで取材をしていますが、こちらで取材していると、名前と顔を出して発言するというのはすごく一般的なことですが、顔と名前を出すことにここまで抵抗感を持っていて、「出さないで欲しい」と頼まれるのは初めてで、非常に驚いています。


それと同時に学生たちが置かれている状況が非常に深刻で、非常に畏縮しているなということを感じています。


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〈プロフィール〉
窪小谷菜月
TBS報道局外信部 ニューヨーク支局員
去年から全米の学生デモを取材

向井彩野
Nスタディレクター
ハーバード大学卒業後 2023年TBS入社
 著書に『米英の名門大学48』など

岸谷蘭丸さん
実業家・インフルエンサー
ボッコーニ大学在学 23歳
岸谷五朗と岸谷香の長男
海外大受験塾「MMBH」設立
教育・多様性などを発信


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