円相場が1ドル=140円台となり、およそ7か月ぶりの「円高水準」となりました。この為替についてもトランプ氏の発言が要因となっています。
“ボウリング球のテスト”主張 日本の安全基準に不満
大統領就任から20日で3か月が経ったトランプ氏。
週末にはゴルフウェアに身を包みホワイトハウスから現れ、記者を見つけると立ち止まり、手を振りました。
アメリカ トランプ大統領(16日)
「神の恵みによって我々は素晴らしい3か月を過ごした」
しかし、本人にとってすべてが思い描いた状況ではないかもしれません。
「トランプは今すぐ退陣しろ」
次々と打ち出す政策に批判が集まり、支持率は低下。抗議デモでは、辞任を求める声も上がっています。
こうしたなか、世界を相手取り、本格的な関税交渉に臨むトランプ氏。発言の一つひとつが世界の市場を翻弄しています。
21日の東京外国為替市場は、円相場が一時、1ドル=140円台まで上昇しました。2024年9月以来、約7か月ぶりの円高水準です。
きっかけは、トランプ氏の動きです。20日、自らのSNSに、貿易の妨げになる「非関税障壁」について8つの項目を投稿。このうちの1つに挙げたのが「為替操作」でした。
市場では今後、アメリカから日本に対し円安の是正を求めるとの思惑から、円を買ってドルを売る動きが強まったのです。
また、トランプ氏は「保護主義的な工業製品の基準」も挙げていて、具体例として記載したのが「日本のボウリング球テスト」です。
トランプ氏は、1次政権時代の2018年にも、同じような根拠が不明確な主張をしていたことがありました。
アメリカ トランプ大統領(2018年)
「日本では車のボンネットにボウリングの球を落とし、へこんだら不合格にする検査がある」
現実には、こうした安全検査は存在せず、当時ホワイトハウスは、トランプ氏の発言について「冗談だ」と弁明していました。
トランプ氏はアメリカ車が日本で売れないことを問題視していて、今回の投稿は、日本の安全基準に改めて不満を示したものとみられています。
今回のトランプ氏の主張について、国土交通省は「車のボンネットにボウリングの球を落とし、へこんだら不合格にする検査」というのは行っていないとしています。
「なぜアメリカの車が売れないか」国会で論戦
国会では、先週行われたトランプ政権との関税交渉について論戦が交わされました。
上田清司 参院議員
「トランプ大統領は『日本から何百万台という車を買っているが、日本は全然買ってくれないじゃないか』と(言っている)。なぜアメリカの車が売れないか」
石破茂 総理
「そもそも、日本で左ハンドルの車がそんなに売れるとは思えない。『左ハンドルに乗っている、かっこいい俺』みたいなのを示したい人は欲しいのかもしれないけど、なかなかここは難しいと思う」
アメリカ側との交渉をめぐり、自らを「格下」と発言した赤沢大臣に対しては…
立憲民主党 徳永エリ 参院議員
「次の交渉では、もっと堂々と強い態度で交渉に臨んでいただきたいと心から願う」
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「交渉相手国の国家元首であるので、最大限の敬意を払いつつ、言うべきことは言う。そのとおりに行動したところ」
関係者によると、閣僚級の協議でアメリカ側は、赤沢大臣に対して肉・コメ・ジャガイモ・魚介・かんきつ系フルーツなどの品目を挙げ、輸入拡大を迫っていたことがわかりました。
牛肉とジャガイモは、非関税障壁とされる検疫の問題などを挙げたとみられるほか、魚介類は、関税の引き下げを求めたとみられます。
今週、加藤財務大臣が渡米。24日には、ベッセント財務長官との会談が調整されています。トランプ政権が為替政策で何かしら求めてくるのではないかという見方も出ています。
『トランプ関税』について「みんなの声」は
小川彩佳キャスター:
円相場が140円台というのは約7か月ぶりとのことですが、何か影響は感じますか?
AIエンジニア SF作家 安野貴博さん:
個人的には、ドル建ての自分の資産はどうなっているのかなというのは気になるところではあります。
ただ、これまでそもそも円安がかなり続いてきたなかで、それが緩和され、たとえば旅行などは少し行きやすくなったのではという思いもあります。
藤森祥平キャスター:
NEWS DIGアプリでは『トランプ関税』について「みんなの声」を募集しました。
Q.円高進むと 生活に影響は?
「輸入品を安価で買える」…23.5%
「海外旅行に行きやすい」…7.8%
「仕事にマイナスの影響」…25.0%
「大きな変化はない」…32.5%
「その他・わからない」…11.1%
※4月21日午後11時06分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは22日午前8時で終了しました
トランプ大統領がSNSで為替操作について触れていますし、そうなると、この影響や円高基調は続いていくのでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
円高基調、ドル安は一本調子では進まないので、二つ問題があります。
たとえば日本とアメリカで話をしても、巨額の黒字をため込んでいる中国が動かないと、この問題はどうしようもありません。
もう一つの問題として、アメリカがどんどんドル安になってくると、アメリカのインフレに結びつきます。そうするとアメリカの国民の反発を買うので、トランプ大統領としてもそう簡単にはいかないというところがあります。
小川キャスター:
こうした背景がありながら、トランプ大統領がSNSで為替操作に言及するというのは、取引材料として提示しているのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
トランプ大統領の頭の中には、40年前のプラザ合意で円をどーんと高く、ドルをどーんと安くして貿易の均衡を保ったという成功体験があると思います。
しかし今の為替というのは、経済の実力や貿易の収支によって決まってくるので、そう簡単に、政府が強引に為替を誘導してはいけないということにもなっています。
ですから、どうもトランプ大統領の一連の発言には、そういう基本的なことに対する誤解がかなりあります。
星浩さん「アメリカの発信はこれから相当ぶれてくる」
藤森キャスター:
関税についても相変わらず、トランプ大統領は「ボウリング球によるテストがあるからアメリカ車が日本で売れないんだ」と主張しています。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
コメに対して700%の関税という発言もありましたが、これも基本的な認識が間違っています。日本政府も一連のトランプ大統領の発言を最近分析していますが、どうも誤解が多いようです。
加えて、側近の中には「いや大統領、それちょっと違いますよ」とアドバイスをする人もいないということなので、アメリカの発信はこれから相当ぶれてきます。
藤森キャスター:
前回の第一次政権のときは、ボウリング球テストの発言についても、周りが「冗談だ」と注釈を入れているんですよね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
トランプ大統領の発言にあまり一喜一憂する必要はないだろうということで、日本政府や自民党ももう少しじっくり構え、相手側の真意を見極めたうえで対応を決めていこうという方向に転換しています。そういう点では、もう少し落ち着いた交渉が必要になってくると思います。
小川キャスター:
こうした見極めに、AIの力も借りたいところですが…。
AIエンジニア SF作家 安野貴博さん:
AIだとトランプ大統領の発言がどうなるのか予測はできず、AIが使えるかどうかはわからないと思います。
ただ、トランプ大統領があることないことを言うプレイスタイルだということはわかってきており、それをもとに受け止めるということなのではないでしょうか。
小川キャスター:
演出なのか、そうではないのかというところも、そろそろ見極めていきたいところではあります。
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<プロフィール>
安野貴博 さん
AIエンジニア SF作家
2024年の都知事選で5位
デジタルで政治変革を目指す
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身
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